演技力を確実にあげる!エチュードを利用した2つの練習法

演技力を確実にあげる!エチュードを利用した2つの練習法

演技力を上げるにはどうすればいいんだろう?

と疑問をお持ちのあなたに向けてこの記事を書いていきます。

この記事を読むとこんなことがわかります。

・誰にでもできる演技力を上げる2つの具体的な方法
 ・繰り返すエチュード
 ・設定のないエチュード

・この2つの方法で演技力のどの部分に効果があるのか

どうも俳優をやっているヒロユキと言います。

僕は今年で俳優歴13年目になります。事務所に所属していないこともあり大きい作品には出ていませんが、それでもTVドラマ、映画、舞台、ラジオドラマ(製作、脚本、主演)など色々な媒体に出演してきました。

また、この13年間「演技とは」ということを考え続けてきました。その間にスタニスラフスキーシステム、リーストラスバーグメソッド、マイケルチェーホフテクニークなど様々な海外の演技論も学び身体に落としてきました。

下の記事では「エチュードとはなにか」「エチュードを役作りにどういかすか」について解説しました。
まだ読んでいない方は、まず下の記事を読んでエチュードとは何かの理解を先にお願いします。

この記事では、本番に向けて役作りを進めていくためのエチュードではなく、役者自身の演技力アップのためにエチュードを利用する方法を2つ紹介していきます。

なお、どちらのエチュードも複数人で行う練習です。

あらかじめご了承ください。

演技力を上げるエチュードその1:繰り返すエチュード

やりかた

1.まず適当な設定を用意します。

例:財政難の漁業組合の対策会議、開店前のラーメン屋、ピラミッドの石を積む奴隷たち等

2.2~5人くらいを一チームとして話し合いもせずにいきなり演じます。

3.いきなり演じるので役が被ることもあり得ます。その時は演じながらどちらかがしれっと違う役に変わりましょう。

例:開店前のラーメン屋で店主が二人いるとか。

4.5分か6分で強制的に切ります。

5.1分ほど時間を取って今のエチュードを振り返ります。

他の人と話さず、自分の頭の中だけで整理しましょう。話し合ってしまうとエチュードじゃなくなっちゃいますからね。

6.再度、最初から同じ設定でエチュードを行います。

話の流れや、役のキャラクターが変わっても構いません。

7.以降この流れを5~10回繰り返します。

概要

繰り返すエチュードは5~6分ほどの即興劇をその名の通り何度も繰り返していく練習です。

ポイントとしては、一回の物語の進行に長い時間をかけず、決められた時間が来たら強制的に終了することです。

したがって綺麗にまとまるエンディングが最初からできることはありません。

一旦切ったら、1分間でどうしたらもっと面白くなるか、上手くいくかを考えます。

そしてまた同じ状況設定でエチュードを始めます。

それぞれの役者が前回の物語をベースに、「キャラクターを変えてみよう」「設定を変えてみよう」「やることを変えてみよう」など新しいアイディアを放り込むことによって少しずつ変化していきます。

ただし、話し合いはNGです。自分の頭の中で考えます。

もし設定を変えるとしても、例えば開店前のラーメン屋という前提となる大きな設定自体を変えないでください。

前提は変えず、「開店作業の忙しいときにクレーマーから電話がかかってきたら」とか、「麺の仕入れを忘れてたら」とか具体的な出来事を変更してください。

2回目以降も同じく5分6分で切って1分考え、また次のエチュードと繰り返していきます。

こうして設定を変えてみたり、省いてみたりと一連の流れを何度か繰り返していくうちに、だんだん一本のシナリオラインが出来てきます。

シナリオラインとは「細かいことは色々変わるけど、大体はこの筋になるよね」というものです。

ただし、

繰り返すエチュードはこのシナリオラインを作るのが目的ではありません。

何度も繰り返していくうちに、一回目では意識できていなかった他の役との関係性や、言動のアラなどが徐々に修正されて現実味を帯びていきます。

身体に馴染む感覚です。

これが実際の役作りにも応用できます。

例えば、あなたはスープの仕込みをしなければいけません。

しかし、掃除をしてるAさんに指示も出さなきゃいけないというシナリオラインができてきたとします。

ただ何度も繰り返していくうちに、「Aさんいつも態度がきついから、柔らかく言わないと一日中嫌な雰囲気になってしまうな」とかわかってきます。

頭の中にAさんの人物像と、それにどう対応すれば一日気分よく過ごせるかという考えが生まれるんですね。

一回目のエチュードではそういう意識は持てませんが、繰り返していくことでこのように日常と同じリアルな感覚が生まれてきます。

例えば、

「この人には気を使って話そう」

「スープの仕込みを早くやらないと開店に間に合わない」

「あ!Aさんまた部屋のすみの掃除雑にやってる。注意しなきゃいけないけど、嫌な雰囲気になるのもなぁ・・・なんて言えば角が立たないかな・・・」

「ヤバい!もうお客さん入ってきちゃう。急がないと!!」

などです。

注:エチュードの切れ目の1分間でこれを考えるのではなく、演じながら上のような気持ちが沸いてくるのが目的です。

1分間で考えることは例えば、

「スープの仕込みに集中しすぎると、Aさんと絡むことなく終わってしまうな。一言どっかで声かけてみようかな」

とかです。

「Aさんに〇〇って言われたらイラっとしよう」とかは、この練習の目的に合いません。

むしろそういう縛りから解き放つための練習です。

演技プランを用意するのではなく、もっとその世界に没入できるように出来事を考えます。

僕らは日常では、パッパッパと意識を切り替えながら、上手く生活しているはずです。

しかし、なぜか芝居になると細かいところを全部無視して、台本に書かれているセリフとト書きが全てになってしまいます。

これでは役から自由さが生まれてきません。

この繰り返すエチュードは、リアルと同じように注意が向き、気を使い、そして行動をする感覚を養う練習です。

効果

この繰り返すエチュードをすることによって得られる効果は以下の通りです。

発想力がつく
・適応力がつく
意識の方向が正しくなる(日常の意識の向きに近くなる)

ポイント

この練習の効果を高めるためにしたほうがいいことが5点あります。

1.時間の制限をつけて○○分以内に○○しないといけないと言う状況を設定する。

例えば、

「開始から2分以内にクレームの電話が入る。食べログにレビュアーなので変な対応をすると店の売り上げに関わってくる。だから穏便に怒りを収めてもらう必要がある」

という設定を入れます。

そのクレーマーへ丁寧な対応をしつつ、Aさんの掃除の雑さを注意し、スープの用意をし、開店もしなければいけません。

→こうすることによって、だらだらした物語にならず意識のフォーカスがパッパッと変わりやすくなります。

2.話し相手によって態度を変える。

→B君には上から目線、Aさんには好意を持ってもらいたいから優しく、Cさんは尊敬する先輩だから気分を害さないように、など態度を変えることによって全員同じように接する不自然な状態からリアルに近づきます。

コツとしては、態度はあえて露骨に変えましょう。

態度の変化を緩やかに演じてしまうと、自分では変えているつもりでも、周りからは大して変わっていないように映ります。

違和感が残るくらい思いっきり変えても、繰り返していくうちに馴染んでいくので最終的には丁度いいバランスでそれぞれの人に対応できていきます。

3.動く。

→話合いなど動かない設定だと、ただの口論で終わってしまいあまり練習になりません。自分なりの作業をしながら口論をするなど、複数のことを同時に行います。(お店の開店準備⇒時間の制限+動き)

4.意図的にハプニングを起こす。

→ハプニングという緊急性が生まれることによって、自分含め演者皆の適応力がつきます。

これは大事なポイントです。

すでにいっぱいいっぱいに意識をパッパッと切り替えていたところに、ハプニングを加えることによって、あなたに更なる負荷がかかります。

これに時間の制限も加えると、「この状況を乗り越えるにはどうすればいいか」と心が真剣になります。

エチュードの切れ目の1分で、そのアイディアを思いついて次のエチュードで放り込んでみましょう。

また仕方のない話ではありますが、繰り返すエチュードなので、ハプニングにもだんだん慣れてきてしまいます。

少しでも慣れずに新鮮な感覚を味わうためには、毎回エチュードが始まるたびに、自分のしなければいけない作業に集中しましょう。

例えば、開店準備であれば、あなたはとにかくスープの仕込みを本気でやります。

ハプニングのことを考えながらスープの仕込みをやってしまうと、現実とは全く違ういわゆる「お芝居」というものになってしまって、この練習の効果が生まれません。

目の前のことに集中しましょう。

5.受け入れる。

→あなたがアイディアを持ち込むのと同じように他の演者もそれぞれのアイディアやキャラクターを放り込んできます。

絶対的なルールとして、「相手の言ったことを否定しない。すべて受け入れる」を徹底しましょう。

理由としては二つあります。

一つは、受け入れないとエチュードの世界が広がっていきません。

同じ設定に固定化されてしまいます。

言ってみれば、状況変化の芽を摘んでいることになります。

もう一つは、この繰り返すエチュードは、役者の適応力を上げる目的があります。

これは相手の無理難題を受け入れることによって養われます。

演じている途中で

「あれ?この相手のアイディアを受け入れると話の流れ自体がおかしくなるな」

と感じることもしばしばあります。

しかし、その場合でも一旦は受け入れてみましょう。

その時のエチュードではずれてしまっても、新たな発見や、こっちの方が面白くなりそうだという道筋が見つかることも良くあります。

相手を受け入れて、ハプニングに対処し、意識の方向をパッパッと切り替えて、1分の間に新しいアイディアを放り込む。

最後までやると正直疲れますが、疲れるということはしっかりやった証拠です。

あなたの役者としての血と肉になっています。

演技力を上げるエチュードその2:設定のないエチュード

やりかた

1.適当な設定を用意します。リアルに即していない方が面白いし練習になりやすいです。

例:スーパー閉店後の売れ残りの野菜たち、密入国中のミジンコたち、変態紳士クラブなど

2.2~5人くらいを一チームとして話し合いもせずにいきなり演じます。

3.リアリティより遊び心、ふざけることを意識します。

4.3~4分で強制的に切ります。オチとかは必要ありません。繰り返さず一回きりで終わります。

概要

これも複数人で行います。

ごく簡単な設定を一つだけ決めて、3~4分演じます。だから設定のないエチュードと言いつつ設定はありますw

繰り返すエチュードの繰り返さないバージョンのような感じを受けると思いますが、こちらは物語を進めるというよりは大きく動けること、躊躇(ちゅうちょ)をとることが目的です。

ですので、リアリティよりも遊び心が大事です。

設定も、財政難の漁業組合での話し合いといったまじめなトピックだけでなく、スーパーの売れ残りの野菜たちとか、会員制変態クラブとか、突飛なものもOKです。

とっさにその設定の中で自分の立ち位置、キャラクターを考え、遊び心いっぱいに演じます。

ふざけた人が勝ちです。

繰り返すエチュード以上に突飛なアイディア、ストーリーになりますが、どうなろうと全面的に相手を受け入れてください。

時間も短いですし、相手のアイディアを拒否したら何も進まずに終わります。

効果

発想力が高まる
・躊躇が取れる
・大きく動ける
・適応力がつく
・勇気がつく

特に、躊躇を取ることが一番の効果です。

俳優は内部・外部含めて色々なことから小さく演技をする圧力がかかります。

「下手だと思われたくない」「リアリティが無いのではないか」「この役はこんなことするはずがない」「カメラを意識しろ」・・・・・・

こういったことを思い続け、言われ続け、知らず知らずのうちにとても大きな躊躇があなたの心の中にあります。

しかし本来、俳優の仕事は役を演じることです。

役とは想像の世界に生きる人物です。

その想像の世界にいる人が、「リアリティが無いのではないか」とか「カメラを意識しなきゃ」なんて考えるでしょうか。

自分は想像の世界で自由になんでもできるんだ。という原点に帰って、役を解放してあげましょう。

そのために、凝り固まった躊躇を完膚なきまでにぶっ壊すことからスタートします。

躊躇が取れると演技力全体が飛躍的に伸びます。

一度取れてしまえば、躊躇によって全ての演技活動に制限をかけていたことに気が付くはずです。

ポイント

効果を高めるためにしたほうがいいこと

1.他の役者が発した発言を否定しない

→(例えばスーパーの売れ残りの野菜たちの会話で)「俺はいつも最後はちゃんと買ってもらえるけど、君たちはいつも売れ残ってるもんな」と言われて、「そんなことねえよ!」と言ってしまうとそこで話が止まってしまいます。
反論したくなったら、一旦相手の言ってることは真実だと受け止めた上で、「こんなに美味しいのに買ってくれない人間は目が肥えてないね」といった風にかわしましょう。

2.人に追従しない。

→複数人でやると誰か一人が話の流れを作り、他の役者がそれについていくと言う構図が良く出来上がります。
常に自分が話を作り上げる必要はないですが、他の役者と同じことをやっているだけだと成長は見込めません。自分だけの行動をしましょう。
とはいっても、相手の意見に反対すればいいわけじゃないですよ。話には乗るけど自分独自の乗り方でのるといった臨機応変さが大事です。

3.一人でいる人に声をかける

→2番目で触れたように、周りに合わさず自分なりの世界観を持って一人で黙々と何かをやってる人が現れます。
こういう人を放置しても物語は進むんですが、そうするとこの人は、エチュード中一人っきりで黙々とやって終わってしまいます。

そのままだと当然その人は成長しにくいですし、逆にあなたが話しかけて巻き込んであげることであなた自身の成長にもつながります。

視野を広く持って、一人の人を物語に巻き込みましょう。そこから何かが生まれることもよくあります。

4.意識的に言動を大きくする
→この練習はリアリティよりも躊躇をとることの方がメインです。日常よりも大きく演じましょう。

5.失敗を怖がらない
→たった3,4分です。そこで面白くやるとか上手くやるとか、出来たらいいけど出来なくても当然です。もっとも大事なのは、失敗を恐れないでとにかく大きくやる勇気を培うことです。

以上が、設定のないエチュードのやり方と効果でした。

ちなみに、前回のエチュードの記事では、本番に向けて役作りをしていく過程で3段階のエチュードの活用方法があることを解説しました。

まだ読んでいなければこちらもどうぞ。

エチュードは役作りにもあなた自身の演技力の向上にもとても効果的です。

どんどんやっていきましょう。

今回の内容を動画にもしてあります。

ただ、動画より上の文章の方がきれいにまとまっているので、記事を読んだ方はあえて見なくてもいいと思います。

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