この記事は、
「ゲイリーオールドマンって演技が上手いなぁ。他にどんな作品に出てるんだろう?」
とお考えの方に向けて書いていきます。
この記事を読むとこんなことがわかります。
・ゲイリーオールドマン出演のオススメ映画5つ【凄まじい演技のものだけ】
・なぜ彼の演技がすごいのか
どうも俳優をやっているヒロユキと言います。
僕は今年で俳優歴13年目になります。事務所に所属していないこともあり大きい作品には出ていませんが、それでもTVドラマ、映画、舞台、ラジオドラマ(製作、脚本、主演)など色々な媒体に出演してきました。
また、この13年間「演技とは」ということを考え続けてきました。その間にスタニスラフスキーシステム、リーストラスバーグメソッド、マイケルチェーホフテクニークなど様々な海外の演技論も学び身体に落としてきました。
また、僕はゲイリーオールドマンを世界一演技の上手い俳優だと思っており、目標としている人物でもあります。
ですからちょいちょい解説に熱が入りすぎています(笑)
ちなみに、ブラッドピットもゲイリーのことを敬愛しており、「GOD(ゴッド)」と呼んでいるそうです。
さてこの記事では、こんな僕が思う名優ゲイリーオールドマンのオススメ映画5つを発表していきます。
それではさっそくスタート!
ゲイリーオールドマン出演のオススメ映画5つ【凄まじい演技のものだけ】
5位 ウィンストン・チャーチル ヒトラーから世界を救った男
イギリスの首相ウィンストン・チャーチルを演じ、第90回アカデミー賞で主演男優賞を受賞した作品。
普段のゲイリーオールドマンとは似ても似つかない風貌。これには、同じくこのアカデミー賞でオスカー像を手に入れた日本人メイクアップアーティスト辻一弘さんがメイクアップしたからだと言います。
どうやらメイクに4時間かかるらしく、ゲイリーも毎朝3時に現場入りだったようです。
それにしても顔だけでなく、体型まで実際のチャーチル首相に寄せるのはすごい。
さて作品についてですが、まずこの映画の冒頭から感じるのはチャーチルの癖の強さ。あまり周りの人に好かれそうもない性格。聞き取りにくい発声。体型からくる特徴的な動き方。事実、作品内でも他の政治家から疎まれています。
周囲からの冷たい視線を感じながらも、チャーチルなりの処世術、人当たりで他の政治家の上に立ち、次々に大胆な提案をして周りを巻き込んでいくという話です。ストーリーとしては特にすごく変わった物語というわけではありません。実際にあった話ですしね。
さて、ここから少し演技の話になります。
どんな人間、どんな役にも魅力的な部分もそうでない部分もあります。
当然俳優は与えられた役の、魅力的な内面・外面、魅力的でない内面・外面全てを役作りしてから撮影に臨みます。
ただこのゲイリーオールドマン(とか他の名優達)のすごさは、その内面も外面も生来自分が持っているものかのように自然に見えるところです。
そんなの俳優なんだから当たり前じゃんと思うかもしれません。
ただ、大部分の俳優は実はそこまで至りません。
役の特徴にばかり目を向けて、悪い部分or良い部分が強く出すぎてしまうことがあります。つまりその特徴だけ浮いて見える。
逆にリアルにこだわりすぎて、役を自由に生きることができず、特徴が弱すぎることもあります。
日本の俳優で言うと、8対2でリアルにこだわりすぎて特徴が弱いです。
これには理由があります。
役の特徴を強めようとすると、普段の自分の動きではない動きになるわけですから、自分のイメージよりだいぶ大げさな動きになるわけです。
はたから見ると、そこまで大げさに映ってなかったとしても、演じる本人からすると、「こんな動きする人間いる!?」と思ってしまいます。
そして、どの俳優も演技が下手だと思われたくはないので、自分のイメージできる範囲内でそこそこ自分が納得できる演技に落ち着くことになります。
「まあ、このくらいだろうな」と。
その結果、特徴が強く出ていない役が出来上がります。
だから、映画マスクで演じたジム・キャリーや、パイレーツオブカリビアンのジョニーデップくらいぶっ飛んでるキャラクターというのは、なかなか日本では見ることはできません。
仮にそういう役を俳優が用意して来ても、監督に認めてもらえないことも原因としてあるとは思います。
ちなみにジョニーデップのジャックスパロウもディズニー側から、こんな酔っ払いみたいなキャラクターにしてほしくない。ということで、一時はジョニーデップ降板の話も出ていたようです。
リアリティに固執すると、そこそこ見える演技になりますが、あくまでそこそこで突き抜けることはありません。とはいえ、リアルさがないと見るも無残な演技になるのはご存知の通りです。
具体的な演技が下手な人の原因とその改善策については、こちらの記事からご覧ください。
話をゲイリーオールドマンのチャーチルに戻しますね。
彼の場合どの役でも、その人物がそこにいることへの違和感がありません。
良い部分だけ突出してるとか、悪い部分ばっかり目立つとか、特徴があまり見えないなどの偏りがありません。
特徴的な動きや考え方を持った人物が生き生きとそこに存在している。
これが一つの名優の条件だと思います。
生き生きと存在している。
ゲイリー演じるチャーチルは、周りの人に疎まれながらも、自分なりの価値観や人との繋がり方によってその場所に生き生きと存在していました。
そして「このチャーチルは誰かが演じてるんだ」と感じないところがアカデミー賞主演男優賞を受賞できた理由だと思います。
チャーチル首相本人はこういう人物であったんだろうと自然と納得してしまう。
役の存在に説得力があるからですね。
こういうキャラクター化することを、演技用語でキャラクタライゼーション(characterization)と言うんですが、その役の特徴を過不足なく身体に備えるのはゲイリーオールドマンの得意とするところだと思います。
ちなみに、ゲイリーが演じる役でも特徴の少ない役もあります。
例えば、ダークナイトのゴードン警部とかはそもそも身体的な特徴はあまりないですね。
ゲイリー本人じゃないので真実はわかりませんが、あの作品はバットマンVSジョーカーが中心の話で、ゴードン警部はあくまでサブキャラ。ここに強い特徴を持たせてしまうと、主軸に目線が向かなくなってしまい、作品の質が下がると考えたのではないでしょうか。
多分僕が同じ役を振られたとしたらそう考えて役作りすると思います。
まあ、元々コミック原作なのでそのゴードン警部に合わせたのもあるんでしょうね。
ゲイリーオールドマンのアカデミー賞受賞作。。まだ見てなければ是非。
4位 レオン
みんな大好き映画レオンからノーマン・スタンスフィールド。通称スタン。
このスタンが最初に姿を現すシーンがめちゃくちゃ印象的ですよね。
錠剤を奥歯で嚙んで、ぶるるっと体を震わすところなんか良く真似しました(笑)
この役の良さは一言で言うと「狂気」。
姿・形は普通の人間なのに、一つ一つの動きが予想もつかなくてスタンから目を離せません。
人を銃で撃つとき、これから殺そうとする相手にベートーベンの良さを語るとき、撃たれて服が破れたことに激怒するとき、匂いで人の嘘がわかると相手の身体をクンクン嗅いでいるとき。
どの時も、狂気をはらんでいて、このあとこの人物がどういう行動をするのか注目してしまいます。
びっくりしたのは、ベートーベンについて語るシーンがゲイリーのアドリブだったということ。
・ベートーベンについて語る部分は完全にアドリブで、シーンが複数回撮影されるたびにオールドマンは違った話をしたという。(出典:映画スクエア様)
演技部分ですごいなと思うのは、チャーチルのところで説明したのと繰り返しになってしまいますが、どんな予測不可能な動きをしたとしても説得力があるところ。
その動きや言葉に納得してしまう。
「あぁ、こういう言動をする人なのか」と。
例えば細かい部分になりますが、嘘かどうか確かめるためにヒロイン・マチルダ(ナタリー・ポートマン)の父親の匂いを嗅ぐシーン。
あなたが(男女どちらだとしても)もしスタンの役を与えられたとして、「人の匂いを嗅ぐシーンを撮ります」となったときに、自然な感じにあの不自然な行動がとれるでしょうか。
当たり前ですけど、僕らは他の人の匂いを嗅ぐことは普通しません。
ただスタンは普段からその異常な行動をします。
役者は普段やらないけれど、役は普段からやっている行動となります。
つまり、普段の自分の経験則ではどういう匂いの嗅ぎ方が常識的か、リアルかの判断がつかないということです。
そんな異常な行動をとっているのにもかかわらず、この人物はこうやって人の匂いを嗅ぐんだと素直に信じさせてしまうところが、ゲイリーオールドマンのヤバさです。
不自然なのに違和感がない。
また、もっと細かいところですが、スタンがその後マチルダの家族を皆殺しにしようと銃を構えて部屋の中に入っていくシーン。
数歩歩いてから2歩ほど戻って、風呂場のドアを開け、マチルダの母に銃をぶっ放します。
この2歩戻るところの違和感のなさが、役者目線で見るとすごいなと思います。
どういう演出であったかはわかりませんが、仮に「一旦行き過ぎてから戻って風呂場のドアを開けろ」という指示が監督から出てたとします。
そうなると、俳優は少なからず段取りに気を取られてしまいます。
「一旦通り過ぎてから戻るのね」と。
ただ、あのシーンはそう見えない。
普通にスタンが家人を探しながら部屋の中を歩いていて、ふと何かが気になってそのまま2歩戻ったように見えます。
段取り感が全くない。
この段取り感がなければないほど、演技はリアルに感じ、観客もその世界に入っていけます。
例えば僕だったら、この「ふと何かが気になって」というところを意識するあまり、行き過ぎた後一瞬立ち止まるかもしれません。
ただゲイリーはそうしない。
行き過ぎて、止まらずに、2歩戻る。
それでいて行動に違和感がない。
すごい俳優です。
3位 告発
3位はケヴィンベーコン主演の映画、告発です。
アルカトラズ刑務所に収監されたヘンリーという男の物語です。
ゲイリーオールドマンが演じるのはその刑務所の副刑務所長グレン。
主人公ヘンリーを拷問にかける冷徹極まりない残忍な男の役です。
優しさなど微塵も感じさせず、そこまでやるのかというくらい残忍なのですが、決して機械的ではない。
「残忍な役なんですね。じゃあ残忍な感じでやりますね」
という薄っぺらさではなく、あくまで残忍な人間がそこに本当に存在していると感じる。
映画を観ている観客にも、恐怖と嫌悪の対象となり、こんな人とは絶対出会いたくないと思う。
言ってみれば立体感があるんです。
残忍とか冷徹という言葉に縛られていない。
映画好きの間でも隠れた名作と知られる「告発」。
暗く重い話ですが、まだ未見でしたらどうぞ。
2位 シドアンドナンシー
来ました。シドアンドナンシー。
ゲイリーオールドマンのデビュー作。そしてとんでもない役作りと演技。
むしろ、デビュー作でアカデミー賞とってもおかしくないレベルの演技です。
まだ観ていない方は是非観てほしいというか絶対観るべき。
シドアンドナンシーとは、イギリスのパンクバンド「セックスピストルズ」のベーシスト、シドヴィシャスとその恋人ナンシーの恋愛模様と麻薬に溺れていく様を描いた映画です。
まず見た目(外的キャラクター)からしてすごい。
そっくりすぎません?
また、映画内でマイウェイという曲を歌うシーンがあるんですが、ここも本当に素晴らしい。
シドヴィシャスの現役の時を知らないんですが、こうだったんだろうと確信できる。
また内面の役作りも、とことん作りこんだらしいです。
当時のオールドマンは、細身のシドに似せるため大幅な減量を行い、シドの実の母親に何度も会いに行くなど、徹底した役作りで撮影に臨んだ。本作でオールドマンが魅せた演技はファンからも高く評価され、完成した映画を観たシドの母親に「息子が蘇った」と言わしめるほどのものだったという。
出典:cinemacafe.net様
息子が蘇ったって実の母親が言うのってすごくないですか?
俳優をやっていてこれ以上の賛美はないでしょう。
外面も内面も役に寄せる。少しでも近づくように役作りをする。
本当に役者の鏡だと思います。
日本ではこんなことを言われたりします。
「役者には2パターンがある。
役を自分に寄せる役者と、役に自分が近づく役者だ」
この言葉を聞くたびに、何言ってんだと僕は思います。
役者は役に近づくのが仕事です。
観客はその物語の中の役の人生を見に来てるんであって、その俳優を見に来てるんではありません。
いや、もちろんその俳優が見たいから映画を観に行くという気持ちもわかるし、そう思う人が現在多数いるのもわかります。
でもその見方が続く限り、日本映画全体のレベルは上がっていきません。
「どの俳優も役によって全く変わる。それが俳優の仕事なんだ」という認識が早く通常になってほしい。
「役を自分に寄せる役者もアリ」と日本が考えている限り、いつまでたっても海外のレベルには達せないと思います。
このシドアンドナンシーのような映画が増えてほしいし、僕自身もゲイリーオールドマンのように役に近づく演技ができるようになっていきたいと思っています。
1位 トゥルーロマンス
第一位は1993年の映画トゥルーロマンス。脚本はあのタランティーノが書いています。
そして、ゲイリーオールドマンは敵役ドレクセルを演じています。
もうね、めっちゃくちゃ格好いい。
一目見て完全にヤバい奴だし、実際娼婦を束ねてるポン引きだし、平気で人を殺すやつなんだけど、魅力的。
出演時間はとても少ないのに、めちゃくちゃ印象に残ります。
そして演技的にも、ここまで変身できるのはすごい。
もう何度も繰り返しになってしまいますが、普通とは全く違う役なのに説得力がある。
その場所にこの本人が存在しているリアリティがある。
外面も内面も全く違うのに、違和感なく存在出来ている不思議。
僕が目指す演技はここです。
ちなみにこの映画、登場キャストがめちゃくちゃ豪華。
主人公はクリスチャンスレーターで、3位で紹介した告発でも弁護士役として出てきます。
あとはクリストファーウォーケン、デニスホッパー、サミュエル・L・ジャクソン。
そしてなんとブラッドピットが超端役として出てくる。
そしてもちろんゲイリー・オールドマン。
音楽もとってもいい。数々の映画音楽を作ってきたハンス・ジマーが作曲。
曲名は「you’re so cool」。この作品のテーマにもなっています。
美しくて一時期携帯の着メロにしてました。
ストーリーはいつものタランティーノ節で、「トゥルーロマンス」のロマンスシーンはそこそこに、結局ドンパチやる感じ。
まだ観てなかったら是非観てほしい。
重厚なストーリーではないけど、俳優陣は重厚。音楽は最高。
そしておもしろい。
まとめ
今気づきました。
意図したわけではないですけど、今回ご紹介したゲイリーオールドマンの5役、全部笑い方が違いますね。
笑い方って、役作りでも意識して変えないと似たようなものになってしまいます。
特にメソッド演技では感情が行動に影響すると考えがちなので、内面を役に近づければ表情も変わると思われやすいですが違います。
表情は表情で作らないと大きく変わることはありません。(作るというか自然に出てくるまで慣れさせるという感じ)
自分が想像できる範囲でしか表情は変わりません。
きっとゲイリーは、役の外面を作っていくときにしっくりくる笑い方も探してるんだろうと思います。
メソッド演技について気になる方はこちらをどうぞ
僕のツイッターでは、ブログとは少し違ったテイストで演技や映画のつぶやきをしています。
ブログほど本腰を入れずに、秒速で読めてちょっとタメになるようなことをつぶやいています。
#シドアンドナンシー#ゲイリーオールドマン の出世作になるのかな?
— 俳優で旅人 ヒロユキ (@hir_o_o_o_o_) September 4, 2019
つーか、このキャラクターライゼーション(外的役作り)神でしょ!ここまで本人に似るか?
参考画像選ぶのも、あれ?これ本物?って迷った。
未見の人は、特に最後の方にシド(ゲイリー)が歌うマイウェイを聞いてほしい。#映画 pic.twitter.com/BTbxG2VpVK
演技力の要素の一つに「意識の方向」というのがある。日常生活と同じように、舞台上やカメラ前でも意識を向けることができるか。
— 俳優で旅人 ヒロユキ (@hir_o_o_o_o_) May 21, 2021
上手い俳優は皆できてる。
具体例を上げると、#ゴッドファーザー Ⅰのマイケルがトイレで銃を探してから撃つまでのシーン。
ここは意識がパッパッと入れ替わってる。 pic.twitter.com/OrH1gscvMw
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