映画「生きてるだけで、愛。」の女優、趣里さんの演技がすごすぎた!!
もう「凄まじい」の一言。
今まで存じ上げなくてすみません。
この記事では、趣里さんと、菅田将暉さんの演技だけにフォーカスして考察していきます。
映画の内容やあらすじについては、僕より語るのが上手い人が山ほどいますので、他のサイトをご覧ください。
どうも俳優をやっていますヒロユキです。
僕は今年で俳優歴13年目になります。事務所に所属していないこともあり大きい作品には出ていませんが、それでもTVドラマ、映画、舞台、ラジオドラマ(製作、脚本、主演)など色々な媒体に出演してきました。
また、この13年間「演技とは」ということを考え続けてきました。その間にスタニスラフスキーシステム、リーストラスバーグメソッド、マイケルチェーホフテクニークなど様々な海外の演技論も学び身体に落としてきました。
現役俳優の目線で、趣里さんと菅田将暉さんの演技について語っていきます。
趣里の演技について

趣里さんは映画の中で、躁うつ病を患っている役を演じています。
感情の起伏が激しく、その波が交通事故のように、いろいろなところにぶつかり、他人にも自分自身にもダメージを与えてしまうような人物です。
リアリティについて
僕は躁うつ病の状態がどんなものかわかりません。
ですが、全編通して彼女の演技のリアリティを感じたし、葛藤や苦悩が痛いほど伝わってきました。
アマゾンプライムのレビューで、実際にうつ病で苦しんだ方もリアリティがあると書いてます。

演技のリアリティという面で言えば文句なしです。
演技という観点から言えば、彼女が躁うつ病かどうかも関係ありません。
何か健常者とは違うものを抱えていて、それに苦しんでいることがありありとわかります。
ここですごいのが、病に苦しんでいても「重く苦しい」表現にならないところです。
普通はうつ状態を演じようとすると、表現が小さくなり、重く、下の方向、又は本人の内側に向かいます。
ジメジメした感じですね。
これは全く間違った解釈じゃないですし、女優がもし変わったら、そのように演じることも十分考えられます。
でも趣里さんは違った。
鬱々とした感情を持ちつつも、それを発散しようとします。
しかし発散したくても、うつ状態で体力も気力も無いので、その発散の仕方が「いびつ」になります。
この「いびつ」さが非常に魅力的。
人間だれしも、その人なりに心に感じてるストレスを発散しようと動きます。
発散と言っても、ただ単に「うぇーーーい!!」と騒ぐだけではありません。
無意識のうちに、貧乏ゆすりをしたり、下唇を噛んだり、発する言葉の一文字目(語頭)が強くなったり。
人間はストレスを溜め込まないように、身体も心も自然と発散する方向に向かいます。
ただ、苦しんでいる演技をしようとすると、抑え込む表現をしようとしすぎてしまう。
それはリアルな僕らの身体の反応に反しています。
もちろん、僕らも状況によっては感情を抑え込んだりします。
人と仲を悪くしないためにイヤでも愛想笑いをしたり、泣くのを我慢したり。
ただ演技をすると、それがオーバーになるというか、やりすぎになってしまうんですね。
誰が見てもやり過ぎと思える演技もあれば、俳優をやってきたから気が付くレベルの小さなやり過ぎもあります。
こういうやり過ぎは、違和感として見てる人に残ります。
でも趣里さんの演技は、発散する方向に向かっても全くやり過ぎていません。
心が動く通りに発散している。
つまり、発散することへの抵抗感が全くないんですね。
一つ一つの動きに躊躇がない。
躊躇がないというのは、言い換えると、衝動的とも言えます。
これは役者にとって、とても大切な能力のひとつです。
なぜなら衝動が強いのは、それだけ役としてその設定の中に存在できているからです。
つまり、映画の空想の設定を信じ込めているということです。
仮に役者の理性が働いていたら、空想の設定を信じ込むことができません。
そして、衝動が生まれません。
「ここは、勢いをつけて怒ったほうがいい」
なんて考えてたら遅すぎる。
それに、リアリティも全くなくなってしまう。
さらに、衝動が強いことで「ノリ」が生まれます。
役にのってる状態。
演技の上手い下手を見極める7つの要素のうちの一つがこのノリです。
どんな演技もノリがないと、のっぺりとしてしまう。
なんかいきいきとしていないような。
詳しくはこちらの記事をご覧ください。
感情の強さについて
さて、この感情の強さこそが、趣里さんの特筆すべきところでしょう。
映画を観ればわかるとおり、彼女はとにかく感情が大きくて強い。
それを持て余して、自分自身ダメージを負う役なんですけど、もう本当に交通事故。
感情が強いというのは、激怒したり、号泣するだけではありません。
激怒するだけの感情をもちながら、それを抑え込むこともあります。
僕らが観ていてぐっとくる演技の一つは、強い感情を必死に抑え込んで我慢してる姿だったりします。
抑え込むにせよ、気にせず発散するにせよ、どちらも良い演技になり得ます。
しかし、どちらも元となる感情がしっかり作り上げられていることがマストです。
よく抑えた演技が良いと言われますが、そもそもの感情の総量が小さいことが多いです。
だから、抑えても感情が漏れ出してこない。
抑えてるというより作ってないだけみたいな。
それはただ演技が小さいだけです。
リアルかもしれないけど、つまらない。
大事なのは、大爆発するくらいの演技(表現)もできるけど、それを必死に抑えて、でも抑えきれずに漏れ出してきてしまう。
ここまで作りきること。
正直、抑えた演技ってそんなに難しくありません。
その元となる感情のパワーをどれだけ大きく強く作れるか、こっちの方が重要です。
その点、映画内の趣里さんは感情がとにかく強い。
そして、あんまり抑えない。
いや、役の人物なりに抑えようとしてるんだけど、すぐ漏れ出してきてしまう。
観てる視聴者からすると、
「おいおい、そんなに感情出しちゃうと上手くやってけないよ」
と心配になるくらい。
なかなか、ここまで感情を作りきれる役者ってあんまりいないです。
だからこそ、演技がとても新鮮で魅力的に映る。
彼女が、役によってキャラクターがどれだけ変わるかは、他の出演作をまだ観てないからわかりません。
キャラクター作りも大事ですからね。
でも、彼女は感情の強さだけでも第一線の女優として戦えるだろうなと思います。
菅田将暉の演技について

菅田君は、趣里さん演じる寧子と同棲している男を演じています。
仕事に対しても、彼女に対しても、全てに諦めている男です。
最初は、なんでこんなに寧子に振り回されても別れないんだろうと思うんですが、次第に余計なところに力を使いたくないだけなんだなとわかってきます。
それがまた、寧子の苛立ちを加速させるんですが。
僕は菅田君の、役によってキャラクターが全く変わるところ。
そして、どんな役でもリアリティがあるところを尊敬しています。
感情を重視する日本では、ちょっと珍しいタイプで、ハリウッド俳優によく見られるタイプの演技です。
今回は、キャラクターとしてはあまり強くないんですが(まあ趣里さんの役が激しいですからね)、それを受け止める男のリアリティは、さすがに上手かった。
普通にどこにでもいる男。
できるだけ争って疲れたくない普通の男。
肩の力が抜けていて、常に自然体。
自然体と言っても、人生に疲れてる雰囲気だけはまといつづけています。
無理に演じようとしてないから、不自然さが生まれることもありません。
まあ、菅田君くらいの名優なら当たり前ですけどね。
彼が、無理に演じようとしてる演技なんて見たことない。
これが小劇場に出演する俳優(人によるけど)とか、まだ力のない俳優だとついつい無理に演じようとしてしまいます。
「自分の役は、こういう人物で、こういう想いを抱えてるんだー!」
と説明しようとしているかのようです。
役作り中に、その想いを作るのは当然なんだけど、それを本番中に押し出してしまうのは良くない。
そういうのは、役として身体にまとっていたり、ときたま漏れ出して来れば十分です。
説明してしまうと途端にリアルじゃなくなる。
こういうのを、「説明型演技」とか「押し出す演技」と言います。
ちょっと見せ方は違うけど、高校演劇を思いだしてみてください。
観たことなければイメージでいいです。
舞台の上で演じてる役者が、観客側に一歩踏み出して
「僕は〇〇だと思うんだ。だってそれは××だから。いろんな苦難はあるけど、でも僕は負けない!!!!」
こんなイメージありませんか?
実際、こんなのにリアリティなんてないじゃないですか。
自分を説明する演技ってこれに近いように感じます。
しっかり役の気持ちに共感して、誠実に役に向かい合っていれば、役の雰囲気は自然と身体にまとうことができます。
無理に演じる必要なんてないんです。
「演技とは演じないことだ」
なんて、どっかの監督が言ってましたが、まさにその通り。
さてさて。話はだいぶそれましたが、菅田君の演技はあらゆる点でレベルが高い。
感情も、キャラクターも、意識の方向(リアリティ)も。
失敗してる演技なんて見たことありません。
演技全体のベースが、めちゃくちゃしっかりしててハイレベルです。
だからこの先、「この役はあんまり良くなかったね」というものも出てこないと思います。
こちらの、演技が上手い日本人俳優TOP5でも、まっさきに菅田君の名前を挙げました。
良かったら他の俳優もチェックしてみてください。
それぞれの俳優の演技がなぜうまいのか解説してます。
まとめ
この「生きてるだけで、愛。」という作品。
趣里さんも、菅田将暉さんも、とても良かったです。
作品の終わり方に「えぇぇ・・・」と思ったけど、まあそれはしょうがないかな。
僕は演技のことはわかっても、映画のことは全く分かりません(笑)
良い演技が観たい方は、是非この映画観てみてください。
僕はアマゾンプライムで観ました。
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