台本の読解力講座!3つの例題で演技力をアップ!

台本の読解力講座!3つの例題で演技力をアップ!

この記事は、

・台本の読み取りってどうやるの?

・読解力をあげる練習をしたい

こんな想いをお持ちの方に向けて書いていきます。

この記事を読むとこんなことが学べます。

①台本の読み取りとは、台本に書かれている嘘を見つけること

②読解力を鍛える3つの例題

どうも俳優をやっていますヒロユキです。

僕は今年で俳優歴13年目になります。事務所に所属していないこともあり大きい作品には出ていませんが、それでもTVドラマ、映画、舞台、ラジオドラマ(製作、脚本、主演)など色々な媒体に出演してきました。

また、この13年間「演技とは」ということを考え続けてきました。その間にスタニスラフスキーシステム、リーストラスバーグメソッド、マイケルチェーホフテクニークなど様々な海外の演技論も学び身体に落としてきました。

この記事では、台本の読み取りとはなにか。

そして、どうすれば読解力を上げることができるかについて解説していきます。

いきなりですが、まず一つ簡単な例題を出します。

下の会話で、あなたがA男を演じるとしたら、どうやってこのセリフを言うか考えてみてください。

トゥルルルル トゥルルルル (電話の音)
ピッ

A男「もしもし」
B男「よっ!A!明日飲みに行かね?」
A男「あー、いいね。行きたいんだけど、今お金がなくてさー

どうです?考えました?

字面をそのままの意味でとらえるとしたら、

「飲みに行きたいけど、お金が無くて行けない。残念」

になりますね。

でもこういう解釈も考えられます。

「B男のために時間使うの面倒くさいな。金がないって言って、穏便に断っとくか」

あなたも、こういう風に誘いを断ったこともあるのではないでしょうか。

ここまでなら、読解力の訓練をしなくてもすぐに思いつく解釈です。

しかし、他にもこういう風に読み取ることもできます。

「飲みには行きたい。でもあまり金は使いたくない。うまいこと言っておごってもらえないかな」

このように、たった一文でもいろいろな意味に解釈ができます。

そして、これらの解釈それぞれによって、あなたの役の目的、役のキャラクターも変化します。

当然言い方も変わってくるはずです。

読解力を鍛えることによって、あなたの役が本当に叶えたい目的を見つけることができます。

また、なにがその目的を叶えるのを邪魔しているのかについても気がつくことができます。

台本の字面だけを追って、そのまま言葉通りに理解してしまっていては、深い役作りとは言えません。

台本に書かれている言葉の裏にある本当の意図を見つけることが読解力です。

演技に大切な能力はたくさんあります。

役の感情を作ったり、演じてるときに日常と同じように意識を持って行ったり。

これらの能力の根幹に当たるのが、この読解力です。

台本をきちんと読み取って、役の本当の目的がわからないと、役の理解もできないですからね。

さあ、それでは、一つずつ学んでいきましょう!

台本の読み取りとは、台本に書かれている嘘を見つけること

台本の読み取りを一言で言うと、台本に書かれているを見つけることです。

台本に書かれていることが、全て本当のことだとはかぎりません。

さきほどの会話の例でもわかる通り、どのセリフもいくつもの解釈ができます。

僕らは、日頃から小さな嘘をたくさんつきます。

それは、

自分を守るためだったり、

相手を傷つけないためだったり、

関係性を悪くしないためだったり、

第三者を守るためだったり、

または、利益を得るためだったりします。

上の会話で言うと、

「うまいこと言って、おごってもらえないかな」

は、利益を得るためですね。

そして、セリフ一つ一つの解釈に対して、台本が答えを教えてくれることはほとんどありません。

ト書きに明確な指定がない限り、あなた自身がその解釈を見つける必要があります。

言い換えると、役をどう作っていくかはあなたに託されているということです。

だから、同じ役を演じるとしても、役者によって全く違う解釈が生まれます。

監督や演出家から指定がないかぎり、どれだけ荒唐無稽な解釈でも構いません。

その解釈に、あなた自身がリアリティを感じることができるのなら何でもいいわけです。

どう解釈してもいいのですが、抑えておくべきポイントが大きく二つあります。

これが台本読解の肝になるので、この二つだけは覚えていって下さい。

台本読解のポイント

①役の考えが、全体を通して一貫していること
②ほとんどの場合、セリフの嘘を見つけると役作りは深くなる

役の考えが、全体を通して一貫していること

セリフ一つ一つをどう解釈してもいいのですが、役の考えや行動につじつまが合うようにしないといけません。

おごってもらいたいと思って、友達の誘いを一度断ってるのに、そのあと

B「おごってやるから来いよ!」

A「おごってもらいたいわけじゃないんだよ」

なんてセリフがあったらつじつまが合いません。

おごってもらいたいという解釈が間違っていたことがわかります。

他のつじつまが合う解釈を見つける必要があります。

シーン全体、作品全体を通して、役の言動に不一致が起こらないように注意して読解してください。

・・・とはいえ、一段深いことを言えば不一致が起こることもあります。

役だって人間ですから、言動が一致しないこともあります。

僕らだって、言ってることとやってることがちがうことありますよね。

「あんな女とは絶対付き合いたくない!」

って言ってたのに、結局翌日付き合ってるとか。

役の言動が一貫していないことも、作品によっては起こりえます。

ただ、その場合でも、なぜ一貫していないのか、あなた自身の中ではしっかりリアリティを持つ必要があります。

「状況が状況だったからしょうがなかったんだ」

「冷静になって考えてみると、バカなことしたな」

など、本当は違うことを望んでいたのにやってしまった理由付けが必要です。

そうしないと、あなた自身が役の存在を信じれなくなってしまいます。

役の存在を信じれなかったら演技はできません。

余談ですが、僕が昔、舞台のオーディションを受けたときのこと。

同棲している彼女に指輪を渡してプロポーズをする。というシリアスなシーンの台本を渡されました。

僕は「そのまま演じたら、他の役者と差がつかない」と思い、役のセリフや行動をすべてコメディとして解釈して演じました。

その結果、審査員に大うけし合格することが出来ました。

確実に、審査員が望んでいた演技でないことは明白です。

しかし、演じるシーン全体を通して役が成し遂げたい目的は一貫していました。

だから、完全にコメディに変えてもシーンとしては成り立ったわけです。

ほとんどの場合、セリフの嘘を見つけると役作りは深くなる

セリフの嘘を発見するたびに、役作りは深くなっていきます。

それはなぜか。

ちょっと視点を変えて考えてみましょう。

「その役のキャラクターは、なぜそこで嘘をついたのか」が、ポイントです。

嘘をつくということは「何かを守りたい」「利益を得たい」など、なにか隠された思いがあるはずです。

何も隠していないのなら、嘘をつく必要もありません。

また、それと同時に、そこには葛藤が生まれることが多いです。

例えば、

「あなたのことなんて大嫌い!」

というセリフがあったとます。

そこに隠されている本当の想いは、

「私はこんなに好きなんだから、あなたももっと好きになってよ」

とも考えられます。

この場合、「もっと好いてほしい」という気持ちが「大嫌い」という言葉の中に充満しているわけです。

「もっと私のことを好きになってよ!」

「でもそんなこと言えない!」

感情のパワーは、このように複数の気持ちがぶつかるときに強くなります。

だから、「大嫌い」というセリフに強い感情を持たせることができます。

これが、台本通りに「大嫌い」って言ってしまうと、セリフに隠された本音が無いため、スルッと流れてしまいます。

本気で大嫌いっていう感情を作って、セリフを言うのなら別ですけど、多分それだと役の解釈がずれてきますよね。

だから「セリフの裏の意図を作る」、「本当の気持ちを見つける」ということは、同時に「そこで嘘をついた理由を見つける」ことでもあります。

こうして役の本当の感情に気がつくことで、役作りを深めていくことができるのです。

どのセリフに対しても、「嘘ではないか」「本当は別の意味があるのではないか」と考える癖をつけていきましょう。

読解力を鍛える3つの例題

これから3つの例題を出します。

あなたは指定された役を演じるものとして、最後のセリフの裏の意味を見つけてください。

どれも答えはありませんが、最終的な結末と矛盾しないようにしてください。

台本読解で演技力をアップ!例題その1

ドラえもん風会話

たまこ「宿題やったの!?」
のび太「帰ったらやるよ!」
たまこ「次のテストで80点超えないと承知しませんからね!」
のび太「大丈夫、今度のテストは自信あるんだ。行ってきまーす!」

結末 テスト0点
あなたはのび太として考えてみてください。

ドラえもんでおなじみの会話です。

このポイントは、なぜのび太が次のテストに自信を持っているのかというところです。

文章をそのまま受け取ると、

「次のテストはのび太の得意な問題が出ることを知っているので、自信があると答えた」

と考えられます。

う~ん、あんまりおもしろくないですね。

それでは、二つ目。

「本当は自信なんてないけど、早く遊びに行きたいから適当なことを言っている」

のび太ならありそう。

これはこれでありです。

ただ、ドラえもんという題材で考えたらやっぱりこれでしょう。

「どうせ、ドラえもんがなんとかしてくれる」

これでこそのび太!!

泣けば、ドラえもんが「しょうがないなぁ~」と言って道具を出してくれる、このパターン。

結局、結末は0点だったので、道具を出してもらえなかったか、道具の間違った使い方をして効果が出なかったかがオチになりそうです。

繰り返しになりますが、答えはありません。

もっとおもしろい答えもあるでしょう。

この例題は、最終的な結末に合致する形で、セリフの裏の意味を創造する訓練です。

台本読解で演技力をアップ!例題その2

ワンピースより

ウソップ「あいつら見てたらよ、やっと決心がついた!おれはこの村を出る!理由は一つ!海賊旗がおれを呼んでいるからだ!」
ウソップ海賊団
「キャプテン!ウソでしょう!?それもウソなんでしょう!!?」
「そんなの急すぎるし!キャプテンこの村大好きじゃないですか!」
「ウソップ海賊団はどうなるんですか!」
ウソップ「世話になったなお前ら 村のみんなには黙って行くつもりだ よろしく言っといてくれ」

結末 ウソップ、ルフィたちと旅に出る
あなたはウソップだとして考えてみてください。

ワンピース知ってる人だったら簡単だし、知らない人がこの文章見るだけだとちょっと難しいかもしれません。

このセリフ自体に嘘はありません。

本当に村の人々には黙ってウソップは旅に出ます。

ただ、あなたがもしウソップを演じるときに、このセリフをそのまま読んでしまっては、役の深みはありません。

このセリフの後ろに流れる感情は

「こいつらと別れたくない。村から出ていきたくない」

です。

それより、もう少し強い感情で

「旅に出て、新しい人生を始めたい」

があります。

二つの相反する感情がぶつかっている中、子分達(?)には、カッコよくいたくて、「よろしく言っといてくれ」とクールなセリフで済ませます。

だから、もしあなたがこのセリフをしゃべることになったら、一番に作らなければいけないのは、

「村から出たくない。こいつらと別れたくない」

という感情です。

そして、「旅に出てもっと大きな男になりたい」という願望とぶつからせます。

この二つの想いが、心にあふれるくらい膨らんだ状態で「よろしく言っといてくれ」で済ませるからこのシーンが映えます。

どのセリフにも解釈は複数存在しますが、このセリフはこれしかないでしょう。

台本読解で演技力をアップ!例題その3

ラジオドラマ「pop thank culture you」より (ちょっと長いですが)

トシ「………なあ」
彼女「ん?」
トシ「実は、バイト先で正社員にならないかって誘われてさ」
彼女「え」
トシ「年齢的にもこんなチャンスもうないと思うから、お願いしようと思ってるん
だ」
彼女「ちょっと待ってよ、メガロマニアはどうするの?就職したら練習時間だって」
トシ「だから、ptcy は…ゲームはもうやめる。しょうがないよ、34 までやって結果
が出なかったんだ。ここら辺が潮時だよ」
彼女「トシ君……」
トシ「これまで好き勝手やってきた分、これからは真っ当に稼ぐよ。少しは生活も
楽になると思うよ」
彼女「ちょっと待ってよ、本当にそれでいいの」
トシ「いいか悪いかじゃなくてさ。しょうがないんだよ。こんな暮らし、君だって
いやだろ?30 半ばになって、ワンルームの二人暮らし。二人でバイトしてなんとか
食いつないでいる。好きなもの買えないし、旅行にだって行けない」
彼女「そんなのわかってたことじゃない」
トシ「俺、ちゃんと働くからさ。俺には君がいるんだからさ、いつまでもわがまま
言ってちゃダメなんだって。気付いたんだよ。結婚して、普通に幸せになろう」

結末 自由(ラジオドラマ本編:https://soundcloud.com/ptcy/
あなたはトシだとして考えてみてください。

僕が2020年に製作したラジオドラマの一部分から抜粋です。

概要を説明します。

3vs3のe-sportsゲーム「pop thank culture you (通称 ptcy)」のプレイヤー、トシのシーンです。

トシは、メガロマニアという3人チームを組んでおり、すでに10年以上このゲームに取り組んでいます。(チームを組んでからは8年)

その人生の大部分を費やしたゲームを辞めて、普通に働いて安定した生活を送ろうと彼女に言います。

当然トシが辞めると、チーム自体も成り立たなくなるので、他二人のチームメイトの人生にも影響してくる決断です。

さて、この最後のトシのセリフの裏に流れる感情はなんでしょうか。

結末はバラしたくないので(笑)、ご興味ある方はリンクからラジオドラマを聞いてみてください。

実はこのトシのシーンは、僕ではなくて相方が書いたので、正しい心情は僕もわかりません。

ただおそらく、このトシの最後のセリフは本心だと思います。

もちろん作品を知らないと詳しい背景はわからないと思います。

この例題だけを読むと「本当はあきらめたくないんだろ!?」と考えがちですが、このときのトシは、結果が出ないままゲームを続けることに疲れきってしまっています。

彼女に「ゲームを辞めて働こうと思う」と言っている言葉はそのまま、自分自身を説得する言葉になっています。

「なんとしてでもプロゲーマーになりたい!」という夢と、

「現実的に不可能。しっかり生きていかなきゃ」という現実がぶつかった結果、

「現実をしっかり見据えるしかない」という考えに落ち着いた場面がここです。

ただ、セリフが本心だったとしても、セリフをそのまま唱えるだけでは、10年間ゲームに費やした重みは出せません。

もしあなたがトシの役作りをするのなら、10年間の時間と労力をかけた想いと、それを押しつぶす現実の両方を作らなければいけません。

その上で、現実的な気持ちが勝った状態で演じる必要があります。

セリフの裏の意味だけではなく、そのセリフが出てくる過程をこの例文で感じ取ってください。

まとめ

この記事では、台本を読み取りとはなんなのか。

どうやって読解力を鍛えることができるのかを解説しました。

台本読解のポイントはこの二つ。

台本読解のポイント

①役の考えが、全体を通して一貫していること
②ほとんどの場合、セリフの嘘を見つけると役作りは深くなる

セリフの裏に流れる感情を見つけてください。

また、セリフ自体に嘘が無い場合もあります。

セリフ自体に嘘が無かったとしても、なぜその場面でそのセリフを発したのかは考える必要があります。

大抵、クライマックスだったりキメとなるシーンでは、複数の感情がぶつかっています。

そのセリフが嘘であれ、真実であれ、役には葛藤が起きているはずです。

この葛藤が、視聴者にも伝わるから名シーンになります。

台本読解は、感情を生み出す根幹です。

読解力をあげるには、様々な作品の様々な役を詳細に研究していって慣れていくしかありません。

考えるヒントは、

「もし自分だったらどうなのか」

です。

この読解ができて、感情作りやキャラクター作りなど、視聴者の目に見える部分を作っていきます。

台本読解後に、本番の演技まで作り上げていく全過程は、こちらの記事に書きました。

良かったらご覧くださいね。

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