演技のエチュードが苦手な人へ。実体験から編み出した4つのコツ教えます

演技のエチュードが苦手な人へ。実体験から編み出した4つのコツ教えます

この記事は、

・エチュードが全然上手くいかない。

・なにもしないまま終わってしまう。


・なにかやろうとするとスベっていたたまれなくなる。

とお悩みの俳優の方に向けて書いていきます。

この記事を読むとこうなります。

①やることが明快だから無駄に緊張しない

②詰まった時の対処法がわかる

③エチュードをやる意味がわかる


④スベっても少しはマシになる

どうも俳優をやっているヒロユキと言います。

僕は今年で俳優歴13年目になります。事務所に所属していないこともあり大きい作品には出ていませんが、それでもTVドラマ、映画、舞台、ラジオドラマ(製作、脚本、主演)など色々な媒体に出演してきました。

また、この13年間「演技とは」ということを考え続けてきました。その間にスタニスラフスキーシステム、リーストラスバーグメソッド、マイケルチェーホフテクニークなど様々な海外の演技論も学び身体に落としてきました。

いやぁ、エチュードって困りますよね。

中には「エチュード楽しい!インプロ楽しい!」っていうツワモノもいますけど、僕は毎回緊張してました。

演じてるときは演じてるときで、何すればいいんだかわからないし。

「好きなようにやっていいんだよ」とか言われても、「好きなことなんかねえよ。早く解放してくれ!」ってずっと思ってました。

しかし、そんな僕も俳優歴13年です。

エチュードもいやでも馴れます。

この記事では、そんな僕が編み出した今日から使えるエチュードのコツを4つお伝えします。

この4つのコツで、得意とまではいかなくともだいぶマシになるとは思います。

それではスタート!

今日から使えるエチュードのコツ4つ

物語を進めようとしない

一つ目は物語を進めようとしないです。

エチュードをしていると、停滞しているのが怖くてついつい物語を展開させてしまいがちです。

でも、物語をどう展開させてやろうかと考えてるその思考は演技的にはマイナスです。

なぜなら、役として舞台に立っておらず、役者のあなた自身の理性が働いてしまっているからです。

演出や脚本といった仕事であれば、そういう考えもありかもしれませんが、役者はもっと純粋にその舞台上の想像の世界を生きることに努めるべきです。

特に演技力を伸ばすためにエチュードを行っているのなら、理性よりも感性で動く特訓をしましょう。

目的を意識する

二つ目は目的を意識するです。

こっちを先に書けばよかったかな。

色々な種類のエチュードがありますが、それがとっさに決まった設定であれ、ある程度準備期間があるエチュードであれ、大事なことはこの目的を意識するということです。

こちらの記事でも書きましたが、演技の土台は目的・障害・葛藤を意識することです。

これによって役が何を求め、何に苦しんでいるのかをはっきりさせることが出来ます。

エチュードも本番の演技と同じです。

むしろセリフという助け舟が無い分、この目的もしっかり必要です。

目的もセリフもない状態で舞台に立っていたら、「この人なにしてんの?」ってなっちゃいますからね。

とにかくこの目的は強烈に持つ必要があります。

「できたら○○したい」

なんて弱さでは使い物になりません。

全存在をかけて「絶対に○○してやりたい!!」と強い気持ちが大事。

特にエチュードのように、あまり長くやらない瞬発力勝負の場合はこれが顕著です。

理想を言えば、目的だけでなく、その目的を果たすのを邪魔する障害と、目的と障害の間で苦悩する葛藤も用意出来たら一番です。

ただ、現実的にとっさにそこまで作ることはできないですし(準備期間がある場合を除く)、全部に手を広げて大きく動けなくなってしまうくらいだったら、目的だけを強く持つ方が上手くいきやすいです。

基本的に、自分の目的を達成しようと一生懸命舞台上で動いていれば、エチュードが失敗することはありません。

だってそれはリアルなものだから。

他の役者と対立するように動く

3番目は具体的なテクニックです。

他の役者と対立するように動く。

これはどういうことかというと、(準備期間の無い)エチュードは話の筋が用意されていない分、一人の意見に皆が従ってしまいがちです。これは相手の意見を受け入れないとエチュード自体が成り立たないことも理由の一つとしてあります。

ただ、一人の意見に皆が従っているだけの芝居に面白さがあるかと言えば・・・まぁ、ないですよね。

一つ目のコツでお話しした通り、別にエチュードが面白くなるようにする必要はないんですけど、あなたの演技力向上の部分から見ても、誰かの意見に追従するだけではあんまり意味がないです。

追従を避けるコツとしては、

相手の意見を受け入れつつ争点を見つける。

これです。

自分と相手の目的がぶつかる部分を探すわけです。

具体例を出します。

AとBという二人の男性がいます。

Aは最近気になる女の子がいて、その子に告白しようかBに相談しようとしています。

もしBもたまたまその女の子が気になってたら、争点が生まれて簡単なのですが、捻りが無いので別の目的にしましょう。

Bは、Aに2泊3日の旅行に誘おうとしています。

例文:

A「Bさぁ、実は俺付き合いたい子がいるんだわ」

B「え?そうなん?」

A「うん、実は・・・」

B「あ!どうせなら今度一緒に旅行にでも行こうぜ。そこでじっくり聞くよ!ゆっくり話そうぜ!」

A「え?旅行?うーん、まあいいけど・・・」

B「じゃ、計画立てっか!」

うん。つまらないw

この例では、①お互いがお互いの目的を達成していて(A君は未達ですが)、②相手の意見も受け入れているんですけど、争点が全くないから面白くなりません。

物語はなんであれ、問題と解決があって初めて成り立ちます。

それでは、このように争点が生まれなさそうな場合はどうすればいいでしょうか。

こういうときは、それぞれの目的をかなえたい理由に時間制限を付け加えます。

例えば、Aだったら

「明日告白しないと、彼女、バイトの先輩に取られちゃうかも。すでに二人は怪しい雰囲気だって話だし・・・しばらくあの子とシフト被らないし・・・・・・あー!頼むB!相談に乗ってくれ!!お前しか相談できる相手いないんだ!」

こうした「明日」、「すでに二人は怪しい雰囲気」、「お前しか相談できない」といった、目的を今日達成しなければいけない理由を付け加えます。

こうすれば本気になれる。

Bの場合も同様に、

「あと1時間以内に旅行の予約しないと、80%OFFのクーポンが使えなくなってしまう!このクーポン2人以上じゃないと使えないしなー。俺、友達Aしかいないし・・・なんとかしてAを説得しないと!!」

こうして、Aを1時間以内に説得しなければいけない理由を作ります。

お互いに目的を「いま、ここで」叶えなければならない理由ができました。

こうなれば、お互いに切羽詰まった争点が生まれます。

理由自体はもちろん何でも構いません。自分が信じられて目的を叶えたいと願えるものなら何でもOKです。

しかし、一つだけ注意点があります。

口論で終わらないでください。

口論すること自体は構わないんですが、それだけだと頭脳作業になってしまいがちです。

行動も何か盛り込んでください。

「相手の気を惹くために何かをする」でもいいし、「別の作業をしながら、相手と絡む」のでもいい。

とにかく、なにか行動です。行動、行動、行動。

話の流れが詰まったら大きく動く

最後は、話の流れが詰まったら大きく動くです。

1つ目のコツで書いた通り、僕らは物語を進めようと考えません。

あくまで、自分達(役)の目的を達成するために動きます。

こうなると、話が完全に停滞してしまうことがあります。

あと、相手との争点が見つからないこともあります。

やることが見つからなくなってポカンとしてしまいそうなときはとにかく大きく動きましょう。

ヌルヌルやってると、その詰まりからなかなか脱出できません。

不自然でも構いません。

パンッと一気に状況を変えるアクションをするのが良いです。

例えば、

さっきのA君とB君が会話していて、同じ口論をぐるぐる繰り返すだけになってしまった場合。

A,B「・・・・・・」

トゥルルルトゥルルル(A君の携帯が鳴りだす)

A「うわっ!!えっ!えっ!!あの子から電話来た。え、B!どうしよう!どうしたらいい??」

とか、

A,B「・・・・・・」

B「あれ!?携帯の充電切れた!ヤバい!予約できない!A頼む!貸して!そして旅行も行こう!」

みたいな。

多少わざとらしくても大丈夫です。

とにかく状況を変えるのが先決。

1つ目のコツで物語を進めようとしないと言いましたが、停滞しちゃった場合の物語の転換だけは、ちょっと頭を使います。

停滞した状態から、なにもせず復活することはほとんどないからです。

もしなにも思いつかなかったら、とりあえず奇声を上げるとかでもいいと思います。

相手が思わず反応してしまうようなもの。

例えば

B「ぴょっぴょっぴょおおおおおおおおおおおおおおおおん!!!!!」

A「え、ど、どどうした?」

B「・・・だってAが一緒に旅行行ってくれないんだもん・・・」

となれば、とりあえず停滞した空気はぶっ壊せます。

僕の経験上、エチュード中にすることがなくなって、エチュードが終わるのを役者も観客も待っているだけというのが一番辛いです。

まずは空気をぶっ壊して仕切り直しましょう。

おまけ:スベった時のメンタル対策

エチュードでスベった時は本当に辛いですよね。

一番のメンタル対策は当然「苦笑い」になるんですがw、それ以外の対策もお伝えします。

まず一つは、スベっても自分のせいじゃないと思う事です。

大体脚本もないんですよ。そんな中上手くできる方がおかしい。

大丈夫。スベってもあなたのせいじゃない。

それに、実は上手くできようができなかろうが、エチュードではどっちでもいいんです。

エチュードで大事なのは、セリフのない状態で想像の世界を生きられるかです。

エチュードは芝居本番と違って、決められたセリフがないのでセリフに縛られることがありません。

現実世界と違う設定だけがあって、セリフはない。

つまり、エチュードは現実世界と芝居本番の中間に位置しています。

なのでエチュードをやることによって、セリフに頼らずに自分の頭と体を通った言葉が出てきます。

これは役作りにおいては、自分の今の役作りの段階を確かめるために使えます。

まだこの役の想いを理解してないな。とかキャラクター弱いな。とかですね。

また、演技力の向上のためにエチュードを用いる時は、勇気、想像力、想像の世界を信じる力、緊張をとるなどの効果があります。

詳しくはこちらのエチュードの記事に書いてあるのでご覧ください。

これがエチュードの目的です。

だから、実は上手くやれたかどうかはどうでもいいんです。

準備する期間があった場合に気にするべきは、相手との関係性や、練習してきた自分の感情やキャラクターにひっかかりがないかをエチュードを通して確認することです。

とっさにやる即興劇だった場合はもっと単純で、目的への意識が強かったかどうか、大きく動けたかどうかだけです。

きっとこれをわかっててもスベると辛いですけど、少しはマシになると思いますw

まとめ

エチュードをするときのコツは4つです。

物語を進めようとしない

目的を意識する

他の役者と対立するように動く

話の流れが詰まったら大きく動く

エチュードで大事なことはセリフのない状態で想像の世界を生きられるかどうかです。

スベったとか上手くいかなかったとかはありません。

役作りでエチュードを利用するのは、自分の今の役作りの段階を確かめるため

演技力を伸ばすのにエチュードを用いるのは、勇気、想像力、想像の世界を信じる力、緊張をとるなどの効果のためです。

他の練習と同じく、失敗も成功も無いと思えば多少気楽になるのではないかと思います。

以上、僕の経験から編み出したコツでした。

この記事内に出てきた、役作りの段階を確かめるためのエチュードと、演技力を伸ばすための具体的な2つのエチュードを説明したページがあります。

もしご興味がありましたら読んでみてください。

役作りの段階を確かめるエチュード

演技力を上げるための具体的な2つのエチュード

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