この記事は、
・社会人になってから演技って始められるの?遅くない?
・そもそも何からやればいいの?エキストラ?劇団に所属?
・私にもできる?
・続けるかどうかわからないけど、始めてもいいの?
こんな疑問をお持ちの方にまるっと回答していきます。
具体的にはこんなことがわかります。
①社会人になってから演技を始めることはできるのか。
②演技を始めたい人はどこに行けばいいのか。
⇒劇団?
⇒事務所?
⇒ワークショップ?
③上手く演じるためにはなにをすればいいのか。
⇒見せかけだけの演技を教えるところが多いので気を付けるべし。
④仕事と演技両立できるのか。
どうも俳優をやっていますヒロユキです。
僕は今年で俳優歴13年目になります。事務所に所属していないこともあり大きい作品には出ていませんが、それでもTVドラマ、映画、舞台、ラジオドラマ(製作、脚本、主演)など色々な媒体に出演してきました。
また、この13年間「演技とは」ということを考え続けてきました。その間にスタニスラフスキーシステム、リーストラスバーグメソッド、マイケルチェーホフテクニークなど様々な海外の演技論も学び身体に落としてきました。
社会人になってから、演技を始めたい。
人によっては、遅すぎるよと言う人もいます。
「高校で演劇部とか入ってないと、いまさら始めても・・・」
なんて。
でも、全くそんなことはありません。
なぜなら、僕自身24歳から演技を始めたからです。
それまで演技の「え」の字も知りませんでした。
アカデミー賞受賞俳優の演技と、カラオケで歌ってるときに流れてる映像の人たちの演技のレベルの差すら全く分かりませんでした。
そんな僕でも、こうして未だに俳優業に携わり続けることができていて、映画やドラマ、舞台に出演もできています。
そして周りには、30代、40代、50代から始める人もいます。
だから、まっっったく年齢なんて関係ない。
あなたも、いまから俳優になれます。
まあ10代の少年少女の役が回ってくることはないかもしれませんね。
早めに始めなかったデメリットなんてそんな程度です(笑)
ただ、演技で生活費を稼ぎたい=プロになりたいとなると、話は別です。
そこはシビアな芸能界のあれこれに組み込まれます。
悲しいですが、この場合は「若さ=正義」です。
単純にほとんどの事務所所属には年齢制限があるので、遅く始めると金を稼ぐ道が閉ざされます。
金の問題を無視すれば、映画でも舞台でも出演することはできます。
出演はともかく、ただちょっとやってみたいだけというのも、もちろんOK。
結構そういう人も多いです。
この記事では、社会人になってから演技を始めたい人の疑問にまるっと答えていきます。
演技を初めてどうなりたいのか。
今、もし躊躇しているのなら何が引っ掛かっているのか。
その恐怖はどうやって取り除けるのか。
具体的に、始める前にどんなことをしておくと良いのか。
一緒に考えながら解決していきましょう。
わたしにも演技ってできる?
やっぱり、最初に引っかかってくるのはここだと思います。
「自分に演技なんてできるのか?」
とくに、小学生や中学生の舞台発表くらいでしか演じた経験がないと、余計に不安に感じるのではないでしょうか。
でも、心配することはありません。
高校までの芝居と、これからあなたが行う芝居は全く別物です。
はっきり言って、高校までずっと演劇部にいて練習してきた人がいたとしても、ほとんどレベルの差はありません。
せいぜい舞台慣れしているかどうかくらいです。
本当の芝居は、声を大きく出すことでも、表情豊かに表現することでもありません。
あなたが、芝居中に本当に感じて動けるか。
これが全てです。
日本の学生の演技教育で、心をどう使うのか、役にどう共感していくのか教えているところなんてまずありません。
本当に大切なのはそっちなのに。
腹式呼吸や、柔軟や、表情をどうやって作るかなんておまけもおまけです。
だから、いまから始めて遅いことは全くありませんよ。
続けるかどうかわからない
「合わなかったら、途中でやめてしまってもいいの?」
これも大丈夫。ほとんどの人は楽しみのためにやっています。
趣味と割り切っている人ももちろんいますし、プロになろうと思って本気で演技に人生をささげても生活費が稼げるレベルまで行ける人は1%もいません。
つまり、99%は途中でやめます。
だからあなたに合わないと思ったら、全然辞められます。
ただ、芝居本番の日程が決まっているのに、途中で抜けるのはNG。
当たり前ですよね。仲間にも観客にも迷惑が掛かります。
やめるなら、本番終了後気持ちよくやめましょう。
セリフを覚えられるかどうか不安
これも問題ありません。
役を与えられれば、稽古の中で自然と覚えていきます。
それに、舞台で(または撮影で)恥ずかしい想いは当然したくないでしょうから、意識が勝手に覚えようと働きます。
むしろ、セリフが本番中飛ばないように、セリフに意識が行き過ぎることの方が問題です。
段取りに縛られて心が動かなくなってしまいます。
事実、この心が動かなくなってしまうのを解消するために、いくつもの演技エクササイズが存在します。
このように、意外と誰でも演技を始めることはできます。
年齢も関係ありません。
しかし、社会人だからこそ考えなければいけない問題は別にあります。
それは時間です。
とにかく、演技、演劇はいろいろと時間がかかります。
本番に出ることができるか?
映像ならまだしも、舞台に出演するとなると、最低でも3日から5日は丸々芝居本番に使います。
大抵は土日含めた3日ないし5日です。
それだけの時間を捻出できますか?
舞台では、他キャストや演出家含めたスタッフ、そして観客とたくさんの人が関係してきます。
だから途中降板は基本的にあってはなりません。
もし、時間の捻出が難しそうだったら舞台出演はあきらめるしかありません。
稽古に出ることができるか?
これも主に舞台です。
芝居本番を迎えるまで、どの団体も1~3ヶ月間は稽古に励みます。
最初は、週1~2、一日4時間程度と何とかなるペースですが、本番が近づいてくるにつれて、週3~5、一日6~8時間と増えていきます。
本番前一週間は、毎日、朝から夜までと時間をめちゃくちゃとられます。
そして本番も上記の通り、3日~5日は丸々使うことになります。
基本的に普通の正社員では、これだけの稽古期間を許してくれるところはないのではないでしょうか。
これが理由で、ほとんどの俳優は正社員にならず、派遣かアルバイトをしているわけです。
だから、売れてる一部の俳優を除いてみんなお金がありません。
とくに30歳前後になると、自分の生活と俳優の将来を天秤にかけて、辞めていく俳優が続出します。
その代わり、舞台を一本やるとその仲間と仲良くなりやすいです。
一緒に苦労して、長い時間を共にしてますからね。
演技全体にどれくらい時間を割けるか?
さて、それでは舞台以外ではどうでしょうか。
映像、または、単に演技の練習だけしたいという方です。
これらに関しては、舞台に比べてだいぶ時間に自由が利きます。
実際、正社員をしながらドラマや映画に出演する方もいるし、演技の練習だけならもっと融通が利きます。
しかし良い演技をするためには、やはりそこそこの時間が必要だということに変わりありません。
演技は他のほとんどの芸術と比べて、間口がひっっっじょおおに狭いです。
絵を描くのも、歌を歌うのも、奥はとても深いと思いますが、演技は奥が深い上に、スタートラインにたどり着くまでが非常に遠いです。遠すぎます。
見せかけの演技・・・たとえば、すぐ泣けるとか、狂ったように見えるとか(TVドラマでよく見る演技)、そういうので良ければ、数日もかからずできます。
ただ、それは本来の演技とは全く別物です。
むしろベクトルとしては真逆です。
本当の演技は、ちゃんと役者の心が動き行動に表れるものを言います。
その作品の世界で、本当に役として生きるわけです。
観客からどう見えているかに、意識を向けたりしません。
役は観客の存在なんて知らないのだから当然ですよね。
だから、すぐ泣けるといった器用さは(ほとんど)必要ありません。
むしろ、不器用にコツコツ役作りをしていく俳優の方が断然伸びていきます。
これには、本当に時間がかかります。
僕がこの演技のスタートラインに立つまでに1年半かかりました。週4でレッスンに通ってです。
まあ、僕はあまり演技の才能が無いので、もっと早く上手くなる人もいると思います。
見せかけではない本物の演技ができると、おそらく俳優以外感じることのない特別な感覚を感じられます。
自分と役が混ざり合っているような、自分がどっちかわからないような感覚。
流す涙は、噓泣きでも目薬でもなく、本当にそこで泣いているんです。
相手役に対する怒りにも、演じているという感覚はありません。
ただ本当にそこで怒っているんです。
たとえば映画「万引き家族」の安藤サクラさんの終盤の涙なんかは、嘘が一ミリも含まれていません。
ああいう真実の演技に近づくために、僕ら俳優はコツコツと基礎練を繰り返していきます。
ちなみにこの自分と役が混ざり合っているような、理性がとても薄まっている感覚を、ロシア語では「サモチューフストビエ」と言います。
日本語に直すと、舞台上における創造的な感覚という意味らしいです。
本当の演技がどういうものかは、こちらの(やたら暑苦しい)記事をご覧ください。
まとめると、演技の能力に関しては、未経験でも心配いりません。
ただ、良い演技を目指すのなら、それなりに時間がかかることだけは知っておいてください。
演技を始めたい人はどこに行けばいいのか。
さて、上の話を聞いても、「やっぱり演技をやってみたい!」とお思いのあなた!
素晴らしいです!
ぜひやりましょう!
それではいったい、どこに行けば演技ができるのでしょうか。
希望別に見ていきましょう。
舞台に立ってみたい
舞台に立ちたいからと言って、いきなり劇団に応募するのはちょっと待ってください。
当たり外れが大きすぎます。
その劇団のレベルが低すぎることも往々にありますが、そもそもあなたの望んでる芝居とは違うスタイルのことも考えられます。
たとえば、僕が最初なにも知らずに応募したところは、普通の芝居とはかけ離れた芝居をする団体でした。
一歩も動かず、声も抑揚をつけず棒読みで、しかし、感情の漏れ出すパワーはしっかり出せ。みたいな。
動かず棒読みで感情をこめろって、かなり尖った劇団です。
芸術系とか言うんですかね?
今となっては、彼らが目指してたものもわかるし、動かずに漏れ出る感情のパワーという意味もわかるんですが、その当時は「へ~舞台ってこういうものなのか」とぼんやり思ってた程度でした。
堅実に行くなら、その劇団の舞台を一度は観てから所属を考えましょう。
他の手段として、客演という劇団に所属せずに単発の芝居に出演する方法もあります。
社会人を続けながらならこっちのほうが身軽に挑戦できますね。
後で紹介するオーディションサイトにも「客演募集」がちょこちょこ出ています。
中には未経験可のものもあります。
応募もしやすいです。
しかし、上のトピックで書いた通り、客演とはいえ芝居に向けての時間はしっかり取られます。
時間を確保できるめどがついてから応募してみましょう。
映画・ドラマに出てみたい
映画やドラマの芝居のことを映像芝居と言います。
TVドラマの出演には、事務所に所属するのがほぼ必須です。
フリーランスでTVドラマの仕事が回ってくることはありません。
映画も、有名監督、有名俳優が出るような作品については、事務所への所属が必須です。
こちらも同じくフリーランスに回ってくることはありません。
オーディションの情報すら手に入りません。
しかし事務所に所属と簡単に言っても、ググっていただければすぐわかりますが、大手・中堅の事務所は年齢制限が厳しすぎます。
20歳まで・・・22歳まで・・・
そして最長25歳までで、約60%の事務所が門戸を閉めます。
次が29歳。
29歳で約90%の事務所が門戸を閉めます。
それ以上は、小さな事務所に所属してちょっとした役を掴むくらいです。
事務所の大小によって、その事務所が引っ張って来れる仕事が違うので、年齢制限に引っかかるとメインどころの役を演じる望みはほとんど断たれます。
もし、「とにかく出演してみたい」「自主映画(カメラを止めるな!みたいな)でも良いから出演したい」ということなら、シネマプランナーズ一択です。
「役者やったことないんですよー」って人も、ここから結構オーディションに来てます。
舞台の客演募集もここから見つけることができます。
このサイトが、フリーランス俳優の希望です。
ちなみに、ほとんどの作品はノーギャラで、たまにギャラが発生しても雀の涙です。
お金には期待しないでください。
エキストラでいいから出てみたい
エキストラは、僕は全くお勧めしません。
現場を見てみたいという経験のためにならいいと思います。
あと、有名俳優に会えたりするのもラッキーですね。
ただ、エキストラから俳優にステップアップは99.99999%ありません。
詳しくは下の記事で。
演技を学びたい
「まずは演技を学びたいよ」というあなたには、演技ワークショップがオススメです。
劇団や事務所と違いその先に出演がないので、誰かに媚びを売る必要もないし、周りとの変なライバル関係もありません。
とにかくあなた自身の演技力の向上に全精力を傾けられます。
演技を始めるスタートとしては、僕的には一番オススメです。
ワークショップで力をつけて、そして、まだ演技に興味があれば、劇団でも事務所でも入ればいいんですからね。
しか~~し!!
とても悲しいことに、演技ワークショップの当たり外れが大きすぎる!!!
教えるレベルが低いだけならまだマシですが、自信満々に見せかけの演技を教えるところもたくさんあります。
百害あって一利なし。
変なクセがつくだけです。
そして、さらにやっかいなことにそのワークショップに入るまで、ちゃんとしたレッスンが行われるかどうかの判断もつかないのが辛い。
だから、僕もどこのワークショップがオススメだよ。とは言えません。
唯一言えるのは、世界の名だたる俳優が学んでいる演技論・演技術を教えているところであれば、まるっきりハズレの可能性は少ないだろうということ。
例えば、
スタニスラフスキー
リーストラスバーグ(メソッド演技)
マイケルチェーホフ
イヴァナ・チャバック
サンフォード・マイズナー
ウタ・ハーゲン
これらの演技術は正しく学べば、あなたの演技の根幹をしっかり作ってくれるとても優良なものです。
上記の演技術を教えます。と明言しているところであれば、器用に演技ができるようになりましたという最悪な事態は免れるかと思います。
それぞれどんな特徴があるかはこちらにまとめてあります。
(ちなみに、僕も2022年春から演技ワークショップ開催しようと計画しています。よかったらお越しください)
上手く演じるためにはなにをすればいいのか。
先ほど言ったように、演技はスタートラインまでが非常に遠いです。
セリフを覚えて、なんとなく感情が乗った感じで演技をするだけなら数か月もあればできると思いますが、そこで本当に感じて動くというのは実に大変です。
単純に心を敏感にして、感情の強さを高めればいいわけではありません。
そのほかの要素もたくさん必要です。
僕は、俳優には目に見える4つの要素と、目に見えない3つの要素の計7つの要素があると考えています。
それがこちらです。
目に見える要素
・感情
・キャラクター
・意識の方向
・ノリ
目に見えない要素
・想像力
・本番力
・読解力
これらの7要素を全部底上げしていけば、演技力も高まると考えられます。
詳しくはこちらの記事をご覧ください。
「具体的にはどんな練習をすれば演技が上手くなるの?」と疑問のあなた。
僕のブログを見ていただければ、山ほど演技練習や演技テクニックが載っているので、丸一日つぶせるかと思いますが、とくに初心者の方はこの記事が良いです。
あとこちらの記事も。
練習だけでなく、おすすめの演技本も紹介しています。
演技の本はそこそこ世に出てますが、この本は一冊持ってて絶対に損しません。
断言しても良いですが、事務所のレッスンでは俳優の心に関する練習なんてほぼありません。
滑舌とか表情の作り方とかやらされます。
僕はやらされました。
表情の作り方はともかく、滑舌はできて損することはないですが、演技力には含まれないと僕は思っています。
さきほどの7つの要素の中にも含まれてませんでしたよね。
大事なのは、想像の世界で自由に動ける本物の演技力をつくることです。
オススメの流れはこう。
本物の演技力学習のながれ
1.上記3つの記事を読んで、演技の基本練習をまず理解する。
2.適当に数日から数週間やってみる。
3.練習に飽きたら、他の演技練習記事も読んでやってみる。
4.いくつか練習してみた中であなたに合いそうなものがあったら、その練習に関連する演技論のワークショップに学びに行く。
⇒それぞれの記事内で、練習を紹介する前後に、その練習に関連する演技論を書いて(あることも)あります。(ex.これはメソッド演技の基礎の練習です等)参考にしてください。
まとめ
この記事では、社会人の方が演技を始めるときに不安に思う点と、その解決方法を書きました。
演技に大切なのは、「本当に感じて動けるか」です。
腹式呼吸でも、滑舌でも、表情の豊かさでもありません。
嘘偽りなく、作品の世界で生きられるかどうかということです。
だから、社会人から演技を始めて遅いということはありません。
代わりに、問題となってくるのが時間。
良い演技をするためには、とにかく時間がかかります。特に舞台。
いきなり、劇団や事務所に入るのもありっちゃありですが、できれば最初は演技ワークショップに通うのが良いと思います。
映画監督主催の、映画出演につながるようなワークショップではなく、ちゃんと演技技術と心構えを教えてくれるところを見つけてください。
変なクセがつくと取るのがとても大変です。
そして、変なクセを自信満々でつけようとしてくるワークショップも数多くあります。
世界で名前が知れている演技術を教えてくれるワークショップならハズレは少ないはずです。
例:
スタニスラフスキー
リーストラスバーグ(メソッド演技)
マイケルチェーホフ
イヴァナ・チャバック
サンフォード・マイズナー
ウタ・ハーゲン
どの演技術も、それぞれ哲学と練習内容が違います。
こちらの記事を読んで目星をつけるか、
僕の演技テクニックを教える記事をいくつか読んでやってみて、自分に合いそうなものを探してからワークショップに通うのがオススメの流れです。
ブログで読むだけなら、タダでできますしね。
ヒロユキの演技ワークショップはこちらから。