【清原果耶】映画「3月のライオン」俳優の演技について考察【染谷将太】

【清原果耶】映画「3月のライオン」俳優の演技について考察【染谷将太】

将棋を題材にした映画「3月のライオン」、もうご覧になりましたでしょうか?

出演俳優みなさん良い演技をしていました。

神木隆之介さん、染谷将太さん、加瀬亮さん、佐々木蔵之介さん、清原果耶さん・・・

原作の漫画のキャラクターを意識してキャスティングしていると思います。

さらに演技力的に見ても、上手いキャストをそろえたなという印象です。

本当に出演している俳優が、大体上手い。

その中でも僕が特に上手いなと思ったのは、この3名。

染谷将太さん ー 二海堂晴信 (桐山零のライバル?病弱)

出典:映画.com様

清原果耶(かや)さん ー 川本ひなた (桐山零を迎え入れてくれる川本家の次女)

出典:モデルプレス様

佐々木蔵之介さん ー 島田開 (桐山零を研究会に誘う。名人宗谷と同期)

出典:ガジェット通信様

この記事では、今あげた3人の演技だけにフォーカスして考察していきます。

映画の詳しい内容については、僕より語るのが上手い人が山ほどいますので、他のサイトをご覧ください。

「演技の考察しようとしてるお前誰なの?」(自己紹介)

どうも俳優をやっていますヒロユキです。

僕は今年で俳優歴13年目になります。事務所に所属していないこともあり大きい作品には出ていませんが、それでもTVドラマ、映画、舞台、ラジオドラマ(製作、脚本、主演)など色々な媒体に出演してきました。

また、この13年間「演技とは」ということを考え続けてきました。その間にスタニスラフスキーシステム、リーストラスバーグメソッド、マイケルチェーホフテクニークなど様々な海外の演技論も学び身体に落としてきました。

この記事では現役俳優の目線で、染谷将太さん、清原果耶さん、佐々木蔵之介さんの演技についてどこが良かったのか、何が上手かったのかを解説していきます。

それでは、さっそくスタート!

映画「3月のライオン」あらすじ

羽海野チカさんによる漫画が原作で、桐山零という若い将棋棋士が、将棋や彼を取り巻く人々との関係の中で成長していく物語。

舞台は将棋の戦いですが、あくまで物語の核は主人公の精神的な成長です。

映画は前後編に分かれており、前編だけでも楽しくみることができます。

2021/7/25現在、アマゾンプライムでどちらも無料で視聴できます。

なお、映画の評価についてはあまり高いとは言えません。(特に後編)

低評価の理由のほとんどが、原作を改悪しているというもの。

僕も原作の漫画は読んでますが、あくまでこの記事は出演俳優の演技についてのみの考察なので、原作に比べて良い悪いについては語りません。

映画単体で考えてみれば、僕は全然悪くないと思います。

染谷将太さんの二海堂役の演技について

まずは、染谷さん演じる二海堂から。

この演技で、注目すべきはキャラクター性です。

はっきり言って、一番上手かった。

最初出てきたときに、「うまっ!」ってつぶやいてしまうほど上手いです。

原作のキャラクターを忠実に模倣しつつ、特徴がしっかり表れている。

なおかつ将棋への想いや、(自称)ライバルの主人公、桐山零への想いも熱くある。

そして何より、役がいきいきしています。

キャラクターや感情だけが浮いてしまっていない。

演技のどの観点から言ってもレベルが高いですが、やっぱり特筆すべきはキャラクター。

話し方や表情が、他の役を演じた時の染谷さんとまるで違う。

素の染谷さんから、だいぶ離れたキャラクターを作り上げていると思います。

ちなみに、特殊メイクでコロコロ丸く太っていますが、そこは演技力とは関係ない部分なので飛ばします。

キャラクター作りのことを専門用語ではキャラクタライゼーションと呼びます。

日本人はこのキャラクタライゼーションが苦手です。

なぜなら、役の外見的な特徴を付ければ付けるほど、

「リアルじゃないんじゃないか」

「こんな変わった動きはしないんじゃないか」

「役から離れてしまっていないか」

「下手だと思われるんではないか」

と、怖くなるからです。

リアルさを求めれば求めるほど、変わったことをやって嘘くさくなることが怖いんですね。

事実、まだ力の足りない役者だと、動きが感情とリンクせず、キャラクターだけが浮いてしまうことも良くあります。

小劇場の舞台だったり、テレビドラマではよく見かけます。

何にも感じてないのに、面白い動きだけしてるなという演技。そして浮く。

演じてる人も、観てる人も悲惨な奴です。

俳優も当然、そんな演技をしたいとは思わないので、どうしてもキャラクター性を抑えてリアルさを追求し始めます。

だから、あんまりキャラクター作りが上手い俳優が日本にはいません。

海外なら、ジム・キャリーや、ジョニー・デップ(パイレーツオブカリビアン)、ゲイリー・オールドマン、ロバート・デニーロ、エドワード・ノートンいっぱいいるんですけどね。

どうでしょう。

日本の俳優でキャラクターの印象が残っている役って誰かいますか?

僕がパッと思いつくのは相棒の水谷豊さんくらいです。

あ、あと藤原竜也さんとかですかね。

そもそも邦画では、感情の強さや作品全体の雰囲気を見せることを重視したものが多いような気がします。

正直映画について、僕はそんなに詳しいわけではないので、映画作りについては全く語れないのですが、キャラクターを重視したものが少ないことは感じます。

例外として、福田監督の「銀魂」なんかは、キャラクター重視ですね。

後、「翔んで埼玉」とか。

こういうコメディ作品は、演技の良し悪しが良くわかります。

上手い俳優は突飛なキャラクターでも、感情と上手くリンクしていて、

「実生活にこんなやつはいないけど、いてもおかしくないかも」

と説得力を与えられます。

この3月のライオンの二海堂はまさにそんな感じ。

キャラクター性と演技の他の要素が高いレベルで融合しています。

キャラクターの作り方にご興味ある方はこちらの記事をご覧ください。

清原果耶さんのひなちゃん役の演技について

主人公の心を癒す川本家の次女、ひなちゃんこと川本ひなたです。

清原果耶さんが演じています。

映画観終わった後調べてみたら、今、朝ドラの「お帰り、モネ」の主役を演じているんですね。

この演技で注目すべきは、「想像を信じる力」です。

彼女の演技の良さは外面的なキャラクター作りより、内面の感情にあります。

感情と言っても極端に感情が強いという感じではなくて、なんかもっとナチュラルで・・・スムーズ。

うん。感情の流れがスムーズに感じます。

完全に憶測ですが、自分の想像を信じやすいタイプの女性だと思います。

俳優には、感情の強さや、キャラクター、意識の方向、台本読解力などいくつもの要素が必要です。

その中でも、想像を信じ込む力というのはとても重要。

なぜなら、演技とはつまるところ想像の世界で生きることだからです。

演出やセリフといった枷(かせ)はあるけども、できるだけそういったものに縛られず、作品の世界で役の人物として生きることを俳優は目指します。

しかし、現実はこれが結構難しい。

次のセリフを思いだしたり、演技の段取りが頭をよぎったり、どうしても役者としての理性が働いてしまう。

それこそその日の体調によっても、かなり変わります。

リハーサルではめちゃくちゃいい演技できたのに、本番では半分も力が出せなかったなんてしょっちゅうです。

こういった好調不調の波がある一番の原因は、作品の世界を信じきれていないからです。

「自分はスタジオで、または、ロケ地で演じているんだ」と、理性が働いてしまうからです。

理性が働き過ぎてしまうと、

・相手役のセリフに心が動かない

・突発的な衝動が沸き起こらない

・感情とキャラクターがちぐはぐ

・その結果役にのれない

と、演技がガタガタ崩れていきます。

清原さんの演技は、見てて無理がない。

大泣きするシーンでは、本当に感情がスムーズに来て泣いてるように感じます。

また一つ一つのシーンで、相手役の言葉や態度をしっかり受け取って、感じたものを返そうとしているように見えます。

清原さんは想像の世界(作品の世界)で起こることに対して、しっかり自分で感じてから動いています。

これは役者の理性で、どのタイミングでセリフを言うとか、どう泣いたらいいか判断するのとは真逆のやり方です。

役としてたしかにそこに存在しています。

結果として、いわゆる嘘で演じたり大げさな演技になりません。

行動一つ一つが、自分の感情とつながっています。

ただ、このやり方だと間が伸びすぎてしまうことがあります。

リアルさにこだわって、自分の感情が動く前にセリフを発するのが怖くなるからです。

「何も感じてないのに、セリフを言ったらそれは嘘になってしまう」と。

だから、間が長くなる。

映画「そこのみにて光り輝く」の演技を考察した記事で解説しましたが、綾野剛さんがそうでした。

リアルを追求し、しっかり感じてから動いていましたが、間が長いなと思う部分がいくつかありました。

間の長さに関しては、完全に監督の判断次第です。

どの作品でも間延びして良いわけではありませんが、「そこのみにて光り輝く」では、ダラダラした日常を描いていることもあり、間延びしていても理解できました。

ちなみにこの映画の清原さんに対しては、間が長いなと感じた部分はありません。

スムーズに感情が流れてるなと感じました。

佐々木蔵之介さんの島田役の演技について

最後は、佐々木蔵之介さん演じる将棋棋士、島田開の演技についてです。

蔵之介さんは、とくに「3月のライオン」前編で重要な役を演じています。

この演技で注目すべきは、「意識の方向」です。

キャラクター性とか、感情の強さというより、その場所にいる説得力がすごいなと思いました。

原作の島田役にそっくりなのもあるし、そこに存在している感がすごい。

(もともと原作の島田は、佐々木蔵之介さんをモデルにしたらしいです)

清原さん同様、無理なく役としてそこにいる感じがします。

この役のリアルさは、意識の方向が正しいことによって生まれます。

将棋の盤面だったり、対局相手だったり、自分の体調だったり、島田という役として意識が向くべきところに向くべきタイミングで焦点があっている。

意識の方向が正しいと、俳優自身がその作品の設定を信じることができます。

佐々木蔵之介として、どういう演技をしようか考えているのではなく、

島田開という役の人物として、盤面が気になるのか、対局相手の顔が気になるのか、リアルにそこで感じることが出来ます。

これが、「こうすれば、こういう風に見える」といった理性だけで判断する器用さの演技だと、役の存在感は表れてきません。

染谷さんや清原さんと同じく、作品の世界で実際に感じて動いているからこその存在感です。

意識の方向の大切さについては、こちらの記事をご覧ください。

まとめ

今回取り上げた3人の特筆すべき点をならべると、

染谷将太さん・・・キャラクター

清原果耶さん・・・想像を信じる力

佐々木蔵之介さん・・・意識の方向

になります。

これらの能力は、僕が思う俳優に必要な7つの演技の要素から来ています。

演技の上手い下手は、これらの要素を見ていくとわかるようになってきます。

ちなみに、川本三姉妹の三女モモちゃんは、撮影当時まだ子供でしたが、演技者として良い点がいくつもありました。

そのままの感性で演技を学び続けて、大人になったら実力派女優になると思います。

まだアマゾンプライムに入ってない方へ。

アマゾンプライムに入ると月額500円で、色々な映画作品を見ることができます。

3月のライオンは、2021/7/25当時無料で前編・後編を見れます。

これから、いろんな映画を観ようかなと思ってる方。

ツタヤでDVDを数作借りれば500円なんてあっという間に超えてしまいます。

それに、借りたり返したりするために、わざわざ足を運ぶのも面倒。

個人的にはこっちの方がイヤですね。

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