アレクサンダーテクニークで俳優の演技が目に見えて良くなる理由【実体験】

アレクサンダーテクニークで俳優の演技が目に見えて良くなる理由【実体験】

この記事は、

・演技がうまくなりたいんだけど、アレクサンダーテクニークってなに?

・アレクサンダーテクニークって俳優にどう役立つの?

・とにかく演技が上手くなりたい。何でもいいから教えてくれ!

こんな疑問や想いをお持ちの方に向けて書いていきます。

この記事を読むとこんなことがわかります。

①アレクサンダーテクニークとは

②アレクサンダーテクニークは、演技にどう使える?


③アレクサンダーテクニークが一番効果的な演技術はマイケルチェーホフテクニーク(テクニークテクニークうるさい)

どうも俳優をやっていますヒロユキです。

僕は今年で俳優歴13年目になります。事務所に所属していないこともあり大きい作品には出ていませんが、それでもTVドラマ、映画、舞台、ラジオドラマ(製作、脚本、主演)など色々な媒体に出演してきました。

また、この13年間「演技とは」ということを考え続けてきました。その間にスタニスラフスキーシステム、リーストラスバーグメソッド、マイケルチェーホフテクニークなど様々な海外の演技論も学び身体に落としてきました。

僕は、演技のパフォーマンスを上げるため、アレクサンダーテクニークというものも習っていました。

アレクサンダーテクニークは演技術ではなく、身体の使い方を学ぶものです。

少し詳しく言うと、無意識に身体にかかっている無駄な力をとる技術です。

だから、腰痛がひどい、肩こりがひどい、このような症状にお悩みの方や、演奏家がパフォーマンスを上げるためにも役に立ちます。

もちろん身体を使って表現する俳優にとっても、とても役に立つものです。

このテクニックを学ぶことで、感情と行動の連結を感じやすくなります。

この記事は、すでに演技をやっている方が読んでいただいていると思います。

あなたはいままで演じていて、心が上手く動かない。感情が出てこない。といったことはありませんでしたか?

出したいときに感情が出せない理由の一つは、身体に無駄な力が入ってしまっているからです。

そこで、このアレクサンダーテクニークを使って、不必要にかかっている力をとり、感情を出しやすくしよう!というわけです。

それではさっそく、「アレクサンダーテクニークが演技力向上にどう役立つのか」詳しく見ていきましょう!

アレクサンダーテクニークとは

まずは、アレクサンダーテクニークとはなにかをもう少し詳しくお伝えします。

なお、この記事を読むことで、なんとなくはアレクサンダーテクニークの理解は深まると思います。

しかし実際に取り入れようとするのなら、絶対にレッスンに通い、先生に教えてもらう必要があります。

なぜならアレクサンダーテクニークは、身体の無意識・習慣的な行動を止めて、無駄な力を入れない動きに変えていくテクニックだからです。

自分自身で意識していない動きなので、そこに個人が気がつくことはかなり難しいです。

レッスンでは、先生によるハンズオンという触診によって、身体をスキャンしていき、習慣的な緊張に気がついていきます。

そして徐々に、あなたが日常生活を送る中で、ふと力が入ってしまっていることに気づくことができるようになっていきます。

少しだけ、アレクサンダーテクニークの生まれた経緯を話します。

アレクサンダーテクニークは、オーストラリアの俳優、F・M・アレクサンダーが発見しました。

アレクサンダーが若いとき、舞台で芝居をしていると、だんだんと声がかすれたり、出なくなるという症状が表れはじめました。

医者に診てもらっても、解決方法が見つかりません。

そこで彼は、

「なぜ舞台の最後になるにつれて声が出なくなっていくのだろう」

「何か声の出し方が間違っているのではないか」

と疑問をもち、首や頭の位置に注目し、自分の身体をチェックし始めたのです。

ここから、このテクニックの研究がスタートしました。

さて、wikipediaによるアレクサンダーテクニークの説明はこちらです。

アレクサンダー・テクニークAlexander Technique)とは、身体がどのように動き、どのように感じるかについての気づき(アウェアネス)を高めることによって、自己についての学びを深め、身体を再教育することを目指す心身技法である[1]

頭-首-背中の関係に注目することに特徴がある。一般には、背中や腰の痛みの原因を改善、事故後のリハビリテーション呼吸法の改善、楽器演奏法、発声法や演技を妨げる癖の改善などに用いられることがある。
出典:wikipedia

wikipediaに書かれている通り、アレクサンダーテクニークで最初に学ぶことは、

「自分の身体の感覚や心の状態をチェック」

することです。

アレクサンダーテクニークを学んでいくことにより、「無意識に肩に力が入っていたな」、「椅子に座るときに、腰に緊張が走ってるな」などに気付いていきます。

こういった意図していない緊張が、僕らの身体には知らず知らずのうちに積もっていき、あなたの身体を疲れさせています。

日本アレクサンダー・テクニーク協会のHPには、もう少しわかりやすい言葉で説明してあります。

アレクサンダー・テクニークは, 心身の不必要な緊張に気づき, これをやめていくことを学習します。
その手がかりとして頭・首・胴体の関係が重要であることが F.M.アレクサンダーの発見でした。

(中略)

頭と脊椎のあいだのプレッシャーが少なくなれば, アレクサンダーのいう「初源的調整作用」が活性化され, 本来もっている自分の能力が解放されます。

(中略)

音楽, ダンス, 演劇, スポーツにおけるパフォーマンスが向上し, 人間関係がらくに, 日常生活が快適になり, 病気や痛みが減っていきます。

出典:日本アレクサンダー・テクニーク協会様

このように、身体の不必要な緊張に気づき、この緊張をとっていくことで、あなたが本来持っている能力を使うことができます。

ここだけ聞くと、若干スピリチュアルな感じを受けますが、実際に体験してみると「あ~たしかに」と納得いくと思います。

一回レッスン受けるだけでも効果があります。

アレクサンダーテクニークのメリット

アレクサンダーテクニークのメリットにはこのようなものがあります。

・身体の痛みをとる
・疲れにくくなる
・演技・演奏などのパフォーマンスがあがる

僕は、演技のパフォーマンスを上げるためにこのテクニックを習い始めました。

最初に感銘を受けたのは、

「僕らは歩くときに、無駄な力を入れて歩いてしまっているかもしれない」

ということでした。

これはどういうことかというと、

例えば、あなたが歩くたびに数グラム程度の無駄な力が腰の右側だけにかかっていたとします。

その数グラムの無駄な力は、あなた自身では気がつくことができません。

なぜなら、その歩き方はあなたが数十年続けてきたもので、すでに習慣になっているからです。

しかし、このたった数グラムも、一日何千歩も歩いていることを考えると、トータルで1日数十キロもの不必要な疲れを生じさせていることになります。

この疲れがのちのち、あなたの腰に痛みを発生させる原因になるわけです。

そして、この不必要な疲れは、腰だけでなく、肩や、こめかみ、胸、背中、首など至るところに無意識に生じています。

座るときも、寝る時も、立ち上がるときも、食器を洗う時も、シャワーを浴びる時も、数グラムずつ無駄なエネルギーを使っているのです。

これを聞いたとき、僕はこう考えました。

「もし、この無駄なエネルギーを取り除けたら、1日に感じる疲労が少なくなるのではないか」
「疲労が少なくなれば、もっといろいろ活動できるのではないか」



「同じ24時間という時間内で、やれること(遊びも含めて)が増えるのではないか」

こうして、演技のパフォーマンスアップ以外にも、アレクサンダーテクニークのメリットを感じてのめりこんでいきました。

アレクサンダーテクニークの意識の流れ

アレクサンダーテクニークでは、以下の順番で、不必要な緊張をとっていきます。

緊張をとる流れ

1.意図
2.観察
3.気づき
4.インヒビション(抑制)
5.プライマリーコントロール(ディレクション)
6.選択
7.行動

意図

まず、あなたがしたい行動を決めます。

ex.) 「椅子から立ちたい」「顔を洗いたい」「前にジャンプしたい」「歩きたい」など

観察

次に、その行動をしてみたときに、身体のどの部分に力が入っているのかを観察します。

例えば、勢いよく椅子に座ると、首の後ろの部分に力が一瞬入ります。(試してみてください)

これは、本来要らない力ですよね。

気づき

どこに力が入っているのか、気づきます。

観察と気づきはセットとして考えてもいいかもしれません。

インヒビション(抑制)

このインヒビションが、アレクサンダーテクニークの重要なポイントです。

不必要な力に気がついたら、ここでそれを取っていきます。

例えば、椅子に座るときの首の後ろの緊張は、斜め上に上がっていくイメージでゆっくりと座っていくと、首に力が入らずに座れます。

プライマリーコントロール(ディレクション)

プライマリーコントロールとは、あなたの身体自体が知っている、一番楽な状態のことです。

何かハッピーなこと(たとえば、あなたが本当にやりたいこと)を考えると、気分が上向き、なにか身体が軽くなった気がしませんか?

これが、プライマリーコントロールが働いてる状態です。

逆に、これからしなければならないこと、面倒くさいと思うことを考えると、気分が重く沈んでいきます。

これが、プライマリーコントロールが働いていない状態です。

インヒビションによって、不必要な緊張をとることで、自動的にプライマリーコントロールが働く状態を作り出せます。

だから、このプライマリーコントロールは、インヒビションの結果として自動的に行われる段階です。

選択

こうして、習慣的にやっている行動では緊張して力が入ってしまうこと、そして、インヒビションによってその緊張を発生させないやり方が見つかりました。

ここの段階で、どちらの動きをするか選択します。

行動

選択した動きを実行にうつします。

このように、アレクサンダーテクニークは、習慣的に無意識でやっている動きを一旦立ち止まって、「そのやり方でいいの?」と考え直すテクニックです。

「いちいち考えなきゃいけないのは面倒くさい」

と思うかもしれませんが、無駄な力を入れないで一つ一つの動作ができるようになれば、あとはそれが習慣になるので、毎回考える必要はありません。

僕はいままで、肩に無意識に力を入れていることが多く、肩こりによくなっていました。

でもアレクサンダーテクニークを学んでからは、肩に力が入っていることに気づくようになり、気づくたびに力を抜くよう習慣化していったため、いまでは肩こりが全く起こらなくなりました。

アレクサンダーテクニークは、演技にどう使える?

さて、ここからが本題です。

このアレクサンダーテクニークは、俳優にどのような影響を与えるのでしょうか。

僕が思う俳優にとってのメリットはこの2つ。

アレクサンダーテクニークが俳優に与える影響

・感じたものが行動に表れやすくなる(感情⇒行動)

・自分の動きが、感情を揺らしやすくなる(行動⇒感情)

身体が緊張していると、上手く感情が出てこないというのは感じたことがあると思います。

そのため、自然に感情が流れてくるように、スタニスラフスキーシステムでも、メソッド演技でも、「リラクゼーション」という練習があります。

リラクゼーションについてはこちらの記事をご覧ください。

緊張して身体に力が入っていると、行動と感情の連結が上手くいかなくなります。

ですから、アレクサンダーテクニークを用いることによって、身体の緊張をとり、感情と行動の連結を良くすることができます。

・高まった感情を目に見える形で行動として表現すること。

・行動することで感情を動かすこと。

このどちらにも、アレクサンダーテクニークは役立ちます。

僕は、とくに行動がスムーズに感情に影響を及ぼすようになりたくて、アレクサンダーテクニークを学びました。

アレクサンダーテクニークが一番効果的な演技術はマイケルチェーホフテクニーク(テクニークテクニークうるさい)

行動することで感情を動かす代表的な演技術といえば、マイケルチェーホフテクニークが挙げられます。

アレクサンダーもマイケルチェーホフも、テクニークテクニーク言っててうるさいと思いますが我慢してくださいw

マイケルチェーホフテクニークには「サイコフィジカル(psycho-phisical)」という言葉があり、その名の通りサイコ(精神的な)とフィジカル(身体的な)を関連させる考え方です。

マイケルチェーホフテクニークの様々な練習方法は、このサイコフィジカルを元に作られています。

例えば、

手を前に伸ばす、

大きく身体を開いたり小さく縮こまったりする、

手の先からエネルギーを飛ばしているように意識する、

頭、胸、脚、それぞれに自分の中心があると考え動く、

など、このような特定の動きから、俳優の感情を湧き起こしていきます。

マイケルチェーホフテクニークの概要はこちらの記事をご覧ください。

このように、チェーホフテクニークでは、動きから感情に影響を与えます。

だから、アレクサンダーテクニークの「動きの緊張をとる」というのは、この演技術と相性が非常に良いです。

より強く、行動から感情に影響を与えることができます。

僕が実際に、アレクサアンダーをチェーホフの練習に使った時に感じたのは、

「自分の身体に意識しやすくなった」

ということです。

例えば、手を伸ばすという動きだけでも、肩や背中の筋肉にどれだけ力が入っているのか、それは不必要な力ではないのか、ちゃんと感じられます。

そして、この手を伸ばすという動きにちゃんと感情が乗せられているか。

この感覚をリアルにつかめることが、マイケルチェーホフテクニークではとても大事なことです。

身体に意識がうまく向けられていないと、気づけない部分もあったのではないかと思います。(今になってはもう確かめられませんが)

結論として、アレクサンダーテクニークは、マイケルチェーホフテクニークの演技レベルを上げるためのサポートとして使うことができると考えます。

マイケルチェーホフテクニークを学ぶだけでも演技力を高めることはできますが、アレクサンダーテクニークをサポートとして使うことで、より練習の効果を感じられます。

もちろんアレクサンダーテクニークは、他の演技術にも使えますし、日常生活の行動一つ一つが楽になるので、チェーホフ関係なく学ぶ価値はあります。

そうそう、僕の例で恐縮ですが、僕は普段パソコンを使うことが多いです。

こうしてブログを書くことだったりしてますしね。

それで肩や腰がすぐに凝ってしまい、整体に通っていました。

整体に行くと、肩・腰がバキバキで必ず整体師さんに驚かれていました。

でも、アレクサンダーテクニークを習い始めてから全く行かなくなりました。

自分で自分の身体を調整できている感じがします。

単純に健康になれます。

まとめ

この記事では、アレクサンダーテクニークの説明と、それが俳優に及ぼす影響について解説しました。

演技力の向上を除いても、アレクサンダーテクニークは日々の生活に役に立ちます。

ただ問題は、レッスン場所を探すのが難しい。

そして、基本的にレッスン費が高いです。

個人レッスン40分で7,000円とか。

グループレッスンなら多少安くなりますが、コロナ禍ではなかなかグループレッスンを行っているところがありません。

また、最初にも書いた通り、独学では身につけることは難しいです。

間違った習慣に気がついていくことだからです。

ただ、本でこのテクニックの知識だけは蓄えることができます。

僕はこの本で勉強しました。

かなり詳しく書いてあります。

できれば、この本で知識を蓄えたうえで、実際に一回は体験してみると良いと思います。

10回、20回続けていくことによって、少しずつ身についてくるものですが、1回だけでも気がつくことはたくさんあります。

そこで学んだ気付きを、普段の動きの中で復習していくと良いのではないでしょうか。

僕は毎週1回レッスンに通っていて、レッスン間の日常生活で、前回学んだことを復習していました。

アレクサンダーテクニークは、感情と行動の連結を良くします。

だから、感情から行動、行動から感情、どちらにも役立たせることはできます。

ただ、感情だけを強化する「感情解放」という練習も演技の世界にはあります。

ご興味ある方はこちらの記事をご覧ください。視聴者がビビるような演技をすることができますよ。

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