この記事は、
・演技とモノマネって何が違うの?
・モノマネが上手ければ演技も上手いってこと?
こんな疑問をお持ちの方に向けて書いていきます。
この記事を読むとこんなことがわかります。
①演技とモノマネの違いと重なる部分
②モノマネを応用すると演技ができる理由
どうも俳優をやっていますヒロユキです。
今年で俳優歴14年目。事務所に所属していないこともあり大きい作品には出ていませんが、それでもTVドラマ、映画、舞台、ラジオドラマ(製作、脚本、主演)など色々な媒体に出演してきました。
また、この14年間「演技とは」ということを考え続けてきました。その間にスタニスラフスキーシステム、リーストラスバーグメソッド、マイケルチェーホフテクニークなど様々な海外の演技論も学び身体に落としてきました。
さて今回は「演技とモノマネって違うもの?」をテーマに話していきます。
実は俳優をやっていて、こういう質問をされることはほとんどありません。
やっぱりうっすら「演技とモノマネには違いがあって、俳優にそれを聞くのは失礼だ」と思うのでしょうか。
しかしググってみると、ヤフー知恵袋にこんなトピックが立っていました。
(参考:https://detail.chiebukuro.yahoo.co.jp/qa/question_detail/q10247541055)
ああ、そうだよな。
たしかに違いってなんだかわからないよなと感じました。
そしてベストアンサーに選ばれていたのがこれ。
演技はその人(つまり役)として生きること。うんうん。たしかにその通り。
他にも
やっぱり、演技とモノマネは全く異なるという意見の方が多いようです。
しかしその中で一人、
これ、おおっと思いました。
さすが役者と名乗っているだけある。
僕の回答もほぼこの人と同じです。
演技とモノマネは別物
でもモノマネができる能力(というよりモノマネするときの「感覚」)は、役作りに非常に使える
しかし残念ながら、結局ヤフー知恵袋のこのトピックには、違いと共通部分は具体的には書かれていませんでした。
そこでこの記事では、演技とモノマネの違いと重なる部分を俳優目線で、具体的に解説していきます。
演技とモノマネの違いと重なる部分
演技とモノマネで一番大きく違うのは、やはり感情の有無でしょう。
これはもう間違いない。
まともな俳優なら演じながら実際に心が動きます。
だからこそ演技にリアリティが生まれてくるし、役として生きることができます。
ヤフー知恵袋のベストアンサーの「演技はその人として生きること」と書かれていた通りです。
反面、モノマネに感情は要求されませんよね。
モノマネの良し悪しは「っぽく見えるかどうか」。
つまりモノマネはキャラクターの内面は意識しません。外面が全てです。
目線、声質、声の出し方、表情、身体の形、動作。。。
これら視聴者や観客の目に見える・耳に聞こえるものが、真似をする対象に近いかどうかがモノマネの良し悪しの基準になっています。
そしてプロのモノマネ師の方は似ているだけでなくて、対象の特徴的な部分をデフォルメすることで笑いも生み出します。
ここから具体的な違いに目を向けるために、一旦「演技力ってなにを指しているの?」を考えていきましょう。
演技力、つまり演技を構成している要素がわかれば、どの部分がモノマネと共通していて、どの部分がモノマネと違うのかわかるからです。
僕は演技力には7つの要素があると考えています。
目に見える要素
感情
キャラクター
意識の方向
ノリ
目に見えない要素
想像力
本番力
読解力
この目に見える要素・目に見えない要素は観客から見てということです。
目に見えるというより伝わるって感じかな。
一つ一つの意味はこちらの記事に詳しく書いてあります。(演技力とは)
ご興味ありましたら後でご覧ください。
さてこの中でモノマネと演技が重なる部分は、「キャラクターだけ」です。
さきほどあげた表情や声の出し方や動作などですね。
その他7項目中6項目は演技にしかない部分。(本番力は怪しいけど)
演技の方がモノマネよりも範囲が広いのがわかるかと思います。
これがそのまま今回のテーマの答えにもなります。つまり
演技とモノマネに共通 キャラクター
演技とモノマネの違い その他6項目すべて
なので俳優の中には、モノマネを低く見ている人も正直います。
「俺がやっているのはモノマネじゃなくて演技なんだ」と。
その気持ちも同じ俳優だからわかります。
わかりますが、モノマネをその程度のものと断じてしまうのは、はっきり言ってもったいない。
モノマネは演技のレベルを上げるために非常に使えます。
プロのモノマネ師の方から学べることもたくさんある。
キャラクター部分しか演技とモノマネに共通するところはありませんが、まさにその役のキャラクターを作るときに、モノマネはとても効力を発揮します。
とは言っても「この役はこんな性格だから、あのキャラクターをモノマネして作ればいいや」という考えだと必ず失敗します。
役作りはそんなに甘くない。
役作り途中で、役に当てはまらない部分がたくさん見つかり上手くいきません。
役作りで重要なのは、モノマネのモデルを役に当てはめることではなくて、そのモノマネをしているときの感覚を応用することなのです。
モノマネの感覚を応用するとは
ここからはちょっと俳優向けの話です。
さて、モノマネの感覚を応用するとはどういうことなのでしょうか。
これは言い換えると、モノマネしている人物の「要素」をとっかかりにして役作りをするということです。
要素とは、上であげた
目線、声質、声の出し方、表情、身体の形、動作。。。
こういったもの。
実際はもっともっと具体的で細かい要素を見つけていきます。
たとえば「動作」。これでは単位が大きすぎる。
身体の動きの中でも、腕のあげ方なのか、そのときの肘の曲がり具合なのか、手首の力の入れ具合なのか、指先の形なのか、指の第一関節の反り具合なのか。
モノマネのモデルのどの動作が、役に応用できるのか試してみる。
そして
「モデルのキャラクターは手を上に挙げる時、肘を真っすぐ上に挙げるけど、自分が演じるこの役はひねりながら上に挙げた方がノル(なんかしっくりくる)な」
という感覚を見つけていく。
大切なのは実際に動いてやってみることです。
頭の中で考えても絶対に答えは出てきません。
実際に動いてみて、身体と心が「腑に落ちる」部分を探していきます。
もしこのときにベースにできるものが全くないと、ノーヒントで挑んでいる激ムズRPGみたいに、苦行を強いられます。
ゲームを進めるために片っ端から村人に話を聞いて、ツボやタンスを調べまくらなければいけないわけです。
でもあなたにモノマネのレパートリーがあれば、役の特徴を探す出発点として使えます。
一つ例を出しますね。
誰もがご存知「ルパン三世」。
あのルパンの独特な声、あなたも思い出そうと思ったらすぐ思いだせるのではないでしょうか。
実はぼく、あの声マネに一時期取り組んでいたことがあり、今でも結構得意です。
ルパンの声マネのコツは、とにかく喉と舌の力を抜くこと。
滑舌とか無視して、はっきり発音できないくらいまで口周りの力を抜きます。
こうしてルパンのモノマネができるようになったからと言って、それをそのまま自分の役に応用しようとしても、それは無理。ルパンにしかなりません。
大事なのは、そこから要素だけを抜き出すこと。
あの前に押し出さないふにゃふにゃしたルパンの声で、適当に役のセリフをベラベラしゃべってみましょう。
すると、「ルパンの声のままでは役に適用できないけど、語尾にだけ力を加えるとかちょっとアレンジを加えれば役が成り立ちそうだな」なんて、なんとなくヒントが見えてくる。
または、「あのしゃべり方すると脳の力も抜けるんだよな。なんかふわふわした感じ」みたいに、しゃべり方から影響されて他の部分の感覚が変わってくることもあります。
そしたら今度は、そのふわふわした感じが役に応用できるかどうか試してみる。(⇨ふわふわした感じを維持したまま、しゃべり方を普通にしてみる等)
どの要素を取り出すにしても、共通するのはキャラクター作りのスタートにモノマネを使うということです。
キャラクター作りの最終地点は、あなたがその動き・しゃべり方・表情・クセをしたときに(気持ちが)のるかどうか。
のっていないと役に生き生きさが出てきません。
どんな動き・どんな目線・どんなしゃべり方でのるかはあなたにしかわからない。
あなたの感覚で判断します。
だから、同じ役でも俳優が変われば演技も全く変わります。
反対に、あなたが演じる役にむりやりモノマネのキャラクターを当てはめようとしても役が生き生きしません。
どこかで見たような型にはまった動きになってしまう。
あなたから生み出されるノリが無いからです。
ちなみにモノマネから作れるのは外的なキャラクターだけですけど、気持ちや感情が良い方向に作っていけているかどうかも、あなたがのっているかどうかで判断します。
そしてこの「動きがのる」「気持ちがのる」というのは、通常役作りが進むにつれて変わっていきます。
なぜなら台本を繰り返し読むことで、役の解釈がどんどん変わっていくからです。
例えば、あなたはある女性に告白するシーンを演じるとします。セリフは「好きだ!」の一言。
最初は、とにかくその女性に想いを伝えようとして「好きだ!」と言っていたけど、台本を何度も読んでいるうちに、
もしかすると友達より先にこの女性を自分のものにしたいというエゴが原動力なのでは?
と解釈が変わってきたとする。
すると当然「好きだ!」の言い方や言う時の動作、目線など、気持ちののる言い方動き方は変わってきますよね。
このように、解釈が変わればのるポイントも変わってきます。
だからモノマネは最後まで使うことはできません。
あくまでキャラクター作りのスタートに、とっかかりを見つけるために使用します。
最後にちょっと難しい話になってしまいました。
難しいついでに言ってしまうと、上で挙げた演技力の要素7つ。
感情・キャラクター・意識の方向・ノリ / 想像力・本番力・読解力
感情とキャラクターの土台となるのが、このノリです。
ノリがなければ、感情がいかに強くてもピントがぼやけるし、どんなに面白いキャラクターでも浮きます。
「なんかやろうとしてるのは分かるんだけど、いまいちピンとこない・・・」
「観ているこっちが恥ずかしくなってくる・・・」
みたいな。
舞台とかドラマとか観ててありません?こういうこと。
そして、読解力・想像力。
この二つが、役(の特に内面)を掘り進むための能力です。
ここを俳優はガッツリ鍛えるから「自分がのっている=役として生きられている」ことを信じられるわけです。
さてだいぶ脱線しました。記事冒頭の話に戻ります。
「演技とモノマネは違うのか?」がこの記事のテーマでした。
ここまで読んでくださったあなたはもうお分かりだと思いますが、これに対する僕の回答は、
演技とモノマネは違う。とくに感情のような内面部分。
でも外的なキャラクター部分は同じ。
そしてキャラクター作りの入り口にモノマネは非常に有効。
です。
まとめ
この記事では、演技とモノマネの違いと共通部分について書きました。
端的に言えば、
違い⇨一番は感情
共通部分⇨外的キャラクター(表情、声、動作など)
です。
そしてキャラクター作りのベースに、モノマネは非常に有効ということもお話ししました。
また注意点として、モノマネのキャラクターをそのまま使ってはいけないことも話しました。
そのままでは上手くはまらないからです。
大事なのはモノマネ対象物の要素を抜き出すこと。
例えば
ルパン三世の声のふにゃふにゃした感じ、
喉の真裏に音が共鳴する触覚、
声を発しているときの脳の力が和らいでいく感覚、
これらをベースに、役に合うような変化を加えて役作りをしていきます。
最終的に役に合うかどうかの判断は、あなたがのるかどうか。
つまりあなたの感性です。
演技力を構成する要素7つのうちのひとつキャラクター。
そのキャラクター作りのスタートにモノマネを使うと、ノーヒントで進まずに役作りができるよ。という話でした。
文字にするとさらっと見えますが、ノーヒントとヒントありってだいぶ違うんですよ。
さて、なんとなく演技とモノマネの違いを調べてたら、思いのほか長かったと思っている方もいるかもしれませんね(笑)
でももし演技にちょっと興味が湧いてきたら、一度試しにやってみませんか?
実際30代、40代、50代から演技やってみようかなとスタートする人も結構います。
演技未経験でも全く問題なし。僕のレッスン受講生の70%は未経験からスタートです。
映画・ドラマを観るのと、実際にやるのはも~全く違います。
楽しさの種類が違う。
演技は正直大変なことが多いけど、それを乗り越えて役と自分自身が繋がってるあの感覚は、おそらくほかのどんなジャンルでも味わえません。
半分自分、半分役みたいな不思議な感じ。
そしてこれは「それっぽく見えればそれでいい」といった日本式の演技では決して到達できないものです。
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東京都内・近辺の方は、オフラインレッスン。
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