この記事は、
演技力を上げるための本が知りたい!
とお考えの方に向けて書いていきます。
この記事を読むとこんなことがわかります。
演技力を劇的にあげるオススメ本5選(ランキング形式)
どうも俳優をやっているヒロユキと言います。
僕は今年で俳優歴13年目になります。事務所に所属していないこともあり大きい作品には出ていませんが、それでもTVドラマ、映画、舞台、ラジオドラマ(製作、脚本、主演)など色々な媒体に出演してきました。
また、この13年間「演技とは」ということを考え続けてきました。その間にスタニスラフスキーシステム、リーストラスバーグメソッド、マイケルチェーホフテクニークなど様々な海外の演技論も学び身体に落としてきました。
この記事では、演技の世界をより深く探究するためのおすすめ本を紹介していきます。
どれも実際に僕が読んで、役に立ったなという本をランキング形式にしました。
演技書は専門的過ぎて読みにくいものも多いので、このランキングを参考にしていただけると嬉しいです。
それでは、さっそくスタート!
演技力を劇的にあげるオススメ本5選
演技力をあげる本第5位:メソード演技
演技が上手くなるオススメ本第5位は、メソード演技です。
日本でも、最近メソッド演技という演技法の名前が聞こえるようになってきましたが、「一体そのメソッド演技とはなんぞや?」を解説した本です。
また、あの三浦春馬さんがオススメ本として挙げられた演技書でもあります。
しかし、この本は英語原本の問題なのか、翻訳の問題なのか、とにかく読みにくくて内容が頭に入ってきにくい。
ただ書いてある内容は、たしかに役に立ちます。
構成としては、それぞれの章ごとにメソッド演技の演技術(練習法)を一つずつピックアップし解説してあります。
だから、
「今日は「五感の記憶」のやり方をマスターしよう」
「今日は「リラックス」だけ完璧に覚えよう」
といった使い方ができます。
また、ただの解説にとどまらず、それぞれに「課題」と称してどのように練習をするのかも書いてあります。
僕は日本でメソッド演技を学んだのですが、この本とは結構練習方法に違いがありました。
でも、すでに学んでいたからこそ「あ、こういうやり方もあるんだ」と気づくポイントもいくつもあったし、「こういうこと言いたいんだよな」と知識の再確認にも使えました。
だから有用ではあります。
ただ、全く知識がない状態で読んではたして頭に入ってくるかどうか・・・
結論としては、良いことは書いてあるんですけど、読みにくいのがちょっと。。。といった感じです。
ざっと読んで「なんとなくメソッド演技ってこういうことかな」と理解することはできます。
でも、実際にレッスンやワークショップで学んでいないと、この本が言いたい根っこの部分はちんぷんかんぷんで終わってしまうんではないかな。
また、本にプレミアがついていて値段も高くなっているので、なかなか手軽に買える金額でもなくなっています。
「読みにくい・買いにくい」という二重の障壁を外せるよう、僕の方でこの本の内容をめっちゃかみ砕いてわかりやすくした記事を書きました。良かったらご参考ください。
演技力をあげる本第4位:演技者へ!
続いて、演技が上手くなるオススメ本第4位は、演技者へ!です。
こちらはメソッド演技ではなく、マイケルチェーホフという俳優兼演技コーチが教え広めたチェーホフテクニークの本です。
チェーホフテクニークは日本では有名ではないですが、はっきり言って使えます。
これは僕自身の経験から断言できます。
メソッド演技は、感情から行動という流れで芝居を作っていくのに対し、チェーホフテクニークは、行動することによって感情を呼び起こし、最終的に感情と行動がよどみなく連携して表現できる技術です。
これをサイコフィジカル(psycho-phisical)と言います。
メソッド演技もそうですが、チェーホフテクニークは絶対に本だけで学ぶことはできません。
なぜなら、感情と行動の繋がりは完全にあなたの身体の中の話なので、文字で説明するのが難しいのが一つ。
そして自分自身では、その練習が正しいかどうか判断できないからです。
感情と行動の連携がスムーズかどうかを測る監督者が必要です。
とはいえ、この「演技者へ!」という本は読みやすいし、理解もしやすいです。
完璧に学ぶためにはレッスンやワークショップに通う必要がありますが、先にこの本を読んでおくことでレッスンの内容理解も早くなるし、自宅で独学してみることも可能です。
なので演技書というとっつきにくいジャンルですが、この本はおすすめできます。
ちなみに、僕はチェーホフテクニークの中で、「センター」「アトモスフェア」「サイコロジカルジェスチャー」が好きで、役作りにとても有効だと思っています。
やり方や解説は全部この本の中に書いてあります。
演技力をあげる本第3位:ザ・オーディション
続いて、演技が上手くなるオススメ本第3位は、ザ・オーディションです。
この本は、正確には演技が上手くなるわけではなく、オーディションの受かり方、乗り越え方を解説する本です。
しかし本の中の第二章、「十二のガイドポスト」という部分で、オーディション用に役を準備するためになにをしたらいいのかを十二の技として紹介してくれています。
これはオーディションだけではなく、芝居の本番にもそのまま使えるくらい有用な内容です。
いくつか例を挙げてみたいと思います。
ガイドポスト2 葛藤 キャラクターが戦っているもの
ガイドポスト3 モーメント・ビフォー(その場面以前に起こったこと)
ガイドポスト7 コミュニケーションと戦争
ガイドポスト9 イベントを探す
このように、芝居に使える技を学ぶこともできます。
とくにガイドポスト2の葛藤や、ガイドポスト3のモーメント・ビフォーなんかは、役作りの上で当然やっておくべきことでもあります。
また、オーディションのテクニックも満載です。
・誰がオーディションを管理しているのですか?
・オーディションに遅れたらどうしましょう?
・台本を覚えなくてはなりませんか?
・オーディションが上手くいっていなかったら、やめるべきでしょうか?
・キャラクターが酔っぱらうのには理由がある
などなど現実に即したオーディション対策を教えてくれます。
さらに素晴らしいことに、ところどころにユーモアが挟んであって読みやすいこともポイント。
僕が好きなのはここ。
Q.なぜ俳優は、拷問のようなオーディションを受けなくてはならないのでしょうか?
A.それ以外のいい方法が見つからないからだ。いい方法があったら、わたしが知りたいくらいだ。
正直!!(笑)
いやー、ほんとに読みやすくてタメになります。
記事を書いていて改めて読みなおしたくなりました。
全体的にオススメできる本なんですが、ただ一つ難点もあります。
それはこの本はアメリカのオーディションを基準としているということ。
日本とアメリカではオーディションのやり方もレベルも違うので、使えないテクニックもいくつか出てきます。
とはいえ大多数のテクニックは使えますし、純粋に演技力を磨くための本としても使えます。
さらに読みやすいので、演技をかじったことがない人でも楽しめる作りになっています。
オススメ!
演技力をあげる本第2位:緊張をとる
続いて、演技が上手くなるオススメ本第2位は、緊張をとるです。
これも演技書というよりは、俳優ではない人々が、演技術を使って日常で緊張しなくなる方法を学んでいくという本です。
主人公は、プレゼンを控えたビジネスマン。冒頭からプレゼンで失敗したくないと緊張の塊です。
そこに、元々大女優だったスナックのママが演技術をもとに、緊張しなくなる方法をレクチャーしていくという物語形式の内容です。
「夢をかなえるゾウ」と同じように、悩む主人公に教えを授けるメンターが表れるタイプの流れですね。
緊張のとり方を学ぶのにもそのまま使えますが、書かれている緊張をとるための演技術はそのまま俳優の練習としても使えます。
例えば、最初の方に出てくるジブリッシュという練習方法は、緊張をとるだけでなく、理性をゆるめ想像の世界に入りやすくする効果もあります。
実際に芝居では、ジブリッシュを使ってキャラクター作りの入り口として使ったりもします。
こちらの記事では、演技力を上げる3つの方法の一つ目として解説しました。
読みやすくておもしろくてタメになる誰にでもオススメできる本なんですが、残念な点もひとつあります。
それは、教えてくれる練習方法が独特で図解が無いと理解しにくいことです。
どうしても活字だけではわかりにくい。
まあそれは、この本に限らず演技書の宿命でもあります。
ただ、この本はどうやら売れ行きが良かったようで漫画版も発行されています。もしかすると漫画の方が理解しやすいかもしれません。
物語としても普通に楽しめるので、是非読んでみてください。
・・・・・・そしてめっちゃ余談ですが。
この著者の伊藤丈泰氏は、僕が長年通っていた演技の先生でもあります。
23年間、演技を教えている演技コーチでもあり、自身も色々な団体を回って演技を学んできた人物です。
だから本の内容についても太鼓判を押せます。
これは役に立つ。
ちなみに、この本を紹介しても先生からマージンは一切もらえません。くれ!!!
演技力をあげる本第1位:イヴァナ・チャバックの演技術
最後!演技が上手くなるオススメ本第1位は、イヴァナ・チャバックの演技術です。
タイトルの通り、イヴァナ・チャバックという演技コーチの教えがふんだんに詰まってます。
そして、今までオススメしてきたどの本よりも分厚い。
かなり読みごたえがあります。
今見てみたところ、あとがき含めて365ページありました。
ですが文章は読みやすいし、一つ一つの教えが明快なので特に詰まることなく学べます。
イヴァナ・チャバックの演技術は、英題に戻すと “The power of the actor”、「俳優の力」というタイトルです。
その名の通り、本当に力強いテクニックです。
いや、テクニックというより演技理論自体が・・・攻撃的です。
細かい部分を無視して大枠でイヴァナの理論を語ると、
1.役の目的を見つける
2.目的を邪魔する障害を見つける
3.役の感情や人間関係を、あなた自身の過去や人間関係に置き換えて役の理解を深める
4.3を通して、役の目的と障害がぶつかっている葛藤を味わう
5.葛藤に打ち勝つ!
といった感じです。
根本にあるのは、
観客は、作品の中の人物が障害に打ち勝ち、目的を達成するところを見たいんだ。ここに一番パワーがあるんだ。
というものです。
実際、本の中に何度も「勝つ!勝つ!勝つ!」と出てきます。
勝つためには、まず役の目的を見つけなければいけません。目指すところがないと役が作れませんからね。
事実、この本の副題は俳優力で勝つための12段階式メソッドと言うんですが、
1つ目のメソッドが「全体の目的」。
2つめのメソッドが「シーンの目的」。
なんと12個あるメソッドのうちの最初の2つが「目的」について語られています。
そして3つ目のメソッドは目的達成を邪魔する「障害」。
この障害が見つかることによって、目的と障害の間に、役の「葛藤」も見つかります。
しかし、葛藤を見つけるだけでは弱いです。
役の置かれている状況や気持ちを理解するために、役者自身の過去や人間関係を使います。(代替者メソッド)
こうすることで、役の悩みを自分ごとにしていきます。
自分ごと化することによって、目的も障害も葛藤も強力に感じることが出来ます。
そして最終的に、存分に苦悩・葛藤した後に、葛藤に打ち勝ち、目的を達成する。
図式するとこんな感じです。
目的がある
↓
障害が生まれる
↓
葛藤が生まれる
↓
葛藤に打ち勝つ
↓
目的達成(ハッピーエンド!)←観客はこれが観たい
まさにアメリカと言った単純明快なロジック。
でもたしかに、これはパワーあります。
葛藤に打ち勝って目的をつかむところを観客が観たいのは当然そうでしょうし、一度役者自身の過去や人間関係も通してるおかげで、リアリティと爆発力もあります。
なんか
「あれこれ言ってないですごいもん見せればいいのよ」
と言われてる気がします(笑)
このイヴァナ・チャバックの理論は、おそらくメソッド演技の流れから来ていると思います。
感情を高めて、爆発力を求めるところなんてそっくり。
だから、メソッド演技の危険性もそのままこの理論にも当てはまるように思います。
メソッド演技の危険性とは、自分の過去やトラウマを使って役の人生を追体験するので、精神的に危なくなってしまうのです。
実際に役作り後、精神疾患を抱えたり、自死してしまう俳優もいます。
僕自身も精神的に不安定になったことがありました。
メソッド演技の危険性についてはこちらの記事に書いたのでご興味がある方はご覧ください。
僕は、イヴァナの理論をどこかで習ったわけではなく、この本を読んだだけなので、実際は全然安全な理論なのかもしれません。
できれば、どこかにいって学ぶのが一番だと思います。
そうすれば誤解なく吸収することが出来ます。
でもまずは、この本を是非一度読んでみてください。
イヴァナ理論を全ては使わないにしろ、俳優として役に立つ考え方や、役の準備の仕方はてんこ盛りに書かれています。
この記事であげた、1~3のメソッド部分を読むだけでも元は取れるくらい深い内容です。
僕自身、「目的」「障害」「葛藤」というのは、どの役作りでも絶対意識して作っています。
今あなたが学んでいる演技をベースに、少しイヴァナ・チャバックの演技術をプラスしてもいいですし、読んでみて「これはすごい!」と思ったら、本気で学べるワークショップを探すこともできます。
読んで絶対損はしない本です。
ヒロユキの演技ワークショップはこちらから。