コメディを演じる時のコツ3選<笑わせようとすると滑る>の解決法

コメディを演じる時のコツ3選<笑わせようとすると滑る>の解決法

この記事は、

・コメディが苦手。全然笑ってもらえない。

・あの滑った時の空気が地獄。

・他の俳優は笑いが起きるのに、私のセリフになるとシーンとするのなんで?つらい。

こんな悩みをお持ちの方に向けて書いていきます。

この記事を読むとこんなことがわかります。

①コメディは笑わせようとするとすべる。まずはドラマから。

②コメディを演じる時のコツ3選

どうも俳優をやっていますヒロユキです。

今年で俳優歴13年目。事務所に所属していないこともあり大きい作品には出ていませんが、それでもTVドラマ、映画、舞台、ラジオドラマ(製作、脚本、主演)など色々な媒体に出演してきました。

また、この13年間「演技とは」ということを考え続けてきました。その間にスタニスラフスキーシステム、リーストラスバーグメソッド、マイケルチェーホフテクニークなど様々な海外の演技論も学び身体に落としてきました。

さて、この記事ではコメディを演じるときのコツについて解説していきます。

コメディはなぜかシリアスなドラマ(いわゆる笑わせることを目的としていない普通の物語)に比べて、簡単にできそうなイメージを持っている人が多いんですが、全くそんなことありません。

むしろ、ドラマに比べて役作りの過程がひと手間増えます。

観てる方からすると、ワーワーキャーキャーやってて楽しそうだと思うのかな。

勢いさえあればコメディができるように見えるのかも。

コメディで苦労しているあなたは既にご存知の通り、芝居で人を笑わせるってそんなに簡単なものじゃありません。

どうすれば笑ってもらえるのか全く分からない。

ふざけてやっても滑るし、まじめにやっても笑えない。

一生懸命演じても観客が静まり返ってたら、つい脚本のせいにしたくなる。

「俺がおもしろくないんじゃなくて、脚本が悪いんだ・・・」って。

心折れますよね。

そして芸人に尊敬の念が湧く(笑)。

逆にセンスだけでドッカンドッカン笑わせられる俳優がいるのも事実。

そういう俳優が素直に羨ましい。

少し話がそれますが、日本でも海外でも俳優をやっているというと、なぜかきまって「どんな芝居するの?(What kind of acting?)」と聞かれます。

そこで毎回返事に困る。

どんな芝居ってなんなんだ。

まあ、アクション俳優のような動きはできないから「う~ん、ヒューマンドラマ・・・?」みたいなあやふやな回答して、聞いた側もわかったんだかわかってないんだか曖昧な顔して終わります。

一体なんて答えるのが正解なんだろう。

だって俳優には、ドラマはやるけどコメディはやりませんとか普通はないですよね?

作品の製作者が、今度コメディの公演を打ちたいから出てくれと言われれば、コメディやるし、シリアスで重いストーリーの作品なんだと言われれば、ドラマをやります。

もしこれが脚本家だったら、ミステリーの人とか、ラブストーリーの人とかはあるかもしれないけど、俳優にはあんまりそういうのないよなぁって思う。

思うに、世間では「ドラマとコメディは全く別の物」「演じ方も全く違う」と思われているのではないでしょうか。

であれば、答えは否。

コメディはドラマの延長線上にあります。

ドラマの役作りのまんまでコメディはできないけど、そこにコメディの要素を一振り二振りしてドラマからコメディに変えるんです。

本当におもしろく、人を笑わせられるコメディはドラマから始まります。

もし「さあコメディを演じるぞ!」と役を作り始めると確実に滑ります。

そして観客も演者も辛い最悪の空気が襲ってくる・・・。

いったいなぜ、いきなりコメディをやろうとすると失敗してしまうのか。

それは、心と身体が分離したまま演じてしまうからです。

詳しく見ていきましょう。

コメディは笑わせようとするとすべる。まずはドラマから。

コメディ作品を演じる時も、まずは普通のドラマ作品の役作りと同じように作っていきます。

つまり、

①まず、あなたが演じる役の目的・障害・葛藤を見つける。

②他の役との人間関係、仕事に対する想い、置かれている状況に対する認識などへの理解・共感。

ここまでは全く普通の役へのアプローチと同じです。

役へのアプローチ方法を詳しく知りたい方は、こちらの記事をご覧ください。(かなり長いのでこの記事を読み終わってからの方が良いです)

まずはオーソドックスな役作りを通して、役の考え方や感じていることを明確にしていきます。

ここをすっ飛ばして、いきなりコメディ!とやると、コミカルな動きや演技プランばっかり意識してしまい内面がおろそかになってしまいます。

そうすると動きが意識の方向や感情とずれて、コミカルな動きだけが浮いてしまう。

その結果、「うわ・・・悲惨・・・」という状態に。

これが、コメディで笑いが生まれない原因の一つです。

執着心

コメディを演じるには、特に、

執着しているもの

を極めて明確に、そして狂乱的にすることが非常に大切です。

ここだけで、コメディの50%を占めるくらいです。

コメディが面白くなる理由は大きく3つ。

・執着心が強すぎる
・執着する方法がおかしい
・執着するものがおかしい

このどれかに当てはまることで面白くなります。

執着心は、コメディに限らずドラマでも役の目的となることが多いです。

役は自分の目的を達成するために、さまざまな苦難を乗り越えて進むというのがほとんどの物語の型。

執着心がないと「苦難乗り越えるの大変だからあきらめよう」で終わってしまいますからね。

物語を成立させるためには、主人公の「どんなにつらくても、絶対に目的を達成してやる!!」というとても強い執着心がないといけません。

この執着心が、「度を超えるor形を変えて表れる」のがコメディの特徴です。

たとえば、好きな子に少しでも近づきたい役があなたに与えられたとします。

コメディ要素のないドラマだったら、

「つい見つめてしまう」

「なにも思いついてないのに話しかけてしまう」

などウブな行動をすることが考えられます。

これがコメディ作品になると、

「好きな子の隣の席にダッシュで座ってしどろもどろに弁解」

なんとなくコメディ作品にありそうじゃないですか?

もっとカオスな作品になると、

「その好きな子の落ちた髪の毛を拾ってテンションマックス!!」

みたいな「えっ、髪の毛欲しいか?」的な展開になるかもしれません。

コメディって言うかギャグですね。

例え話の意味不明さは置いておいて(笑)

このように、

執着する強さが変わる
執着する方法が変わる
執着する対象が変わる

のがコメディの特色だと思います。

しかし、元にあるのはやっぱりドラマ作品と同じく役への理解です。

そして役のピーキーな(感情の上がり下がりが大きい)反応に対応できるだけの、役への共感が大事になってきます。

それが、ハリボテではない本当の執着心を作ります。

つまり強く執着している風を演じるのではなく、あなた自身が本気で役と同じ強い執着を持つ。

これにより演技がリアルになり、その滑稽さに笑いが生まれます。

執着している風止まりだと、結局それは演技プランやテクニックで笑わそうとしているだけです。

これでは役の心の動きと身体の動きにずれが生じ、それは観客にも伝わります。

そしてうすら寒い反応が返ってくるいつものパターン。

あなた自身が一般常識を超えるほどの強い執着心を抱くことが大切です。

コメディに大切な3つの要素

強い執着心だけでもコメディにはなりますが、それだけではパワーが弱い。

僕はコメディを上手く演じるための要素は3つあると思っています。

一つは、ここまで話した「執着」

そして次は「葛藤」

最後に「外的キャラクター」です。

執着

執着は上で話した通り、以下の3つで笑いが起きます。

・執着心が強すぎる
・執着する方法がおかしい
・執着するものがおかしい

執着心が強すぎる⇒「そこまでやる!!?」

執着する方法がおかしい⇒「そんなことやる!?」

執着するものがおかしい⇒「そこかい!!」

ってことですね。

執着心は衝動と密接にかかわってきます。

大きい動きにしろ、小さな動きにしろ、その役なりの衝動が感じられないとリアルさは生み出されません。

繰り返しになりますがリアルでないと、「はいはい、お芝居お芝居」と冷めた目で見られます。

お笑い芸人くらいメリハリがついた動きであれば、リアリティがなくても成立するのかもしれませんが、僕らがやろうとしているのはコントではなくコメディです。

そして僕らは芸人ではなく、俳優です。

だからやっぱり、リアリティを持ちつつ客も笑わせたい。

僕は芸人の技術にどんなものがあるかは全く知りませんが、彼らから学べるところはたくさんあります。

東京03さんや、バナナマンさんのコントは是非観てほしい。

執着が大切ってことがすごくよくわかると思います。

海外では、ジム・キャリーが出演している映画。

あんなむちゃくちゃな動きをしていてもリアリティを保っているのは本当にすごい。

日本でも芸人の方で演技が上手い人も多いですよね。

葛藤

続いては葛藤です。

まずは葛藤とはどういう心理状態か考えてみましょう。

一般的には「AかBか選べ」という選択肢を与えられたとき、なかなか決められず「ぐぬぬぬ・・・」することですよね。

演技の場合、叶えたい目的とそれを邪魔する障害の戦いのことを示します。

「あの子と結婚したい!!」(目的)

「でも両親同士が仲が悪くて結婚を認めてもらえない・・・」(障害)

「どうしよう・・・どうしよう・・・」(葛藤)

これは、ロミオとジュリエットを3行で表したわけですが、ものの見事に目的・障害・葛藤が示されています。

目的は、役が渇望するもの。

つまり、上で説明した役の執着心が目的を生み出します。

障害は、ロミジュリのように当人の外にあることもあるし、内面から生じることもあります。

告白したいけど振られたらどうしようみたいな。

この目的と障害の狭間でうろたえている、つまり葛藤している役の姿は笑いを誘います。

お笑いで言うところの、あるあるネタで笑ってしまう心境なのかな。

「うわー、わかるわー」という笑い。

でも、普通に葛藤しているだけだとそうはならない。

シェークスピアのハムレットのように、

「生きるべきか死ぬべきかそれが問題だ」

と葛藤していても、さすがに笑えませんよね。

バーミヤンで中華食いながら、なぜか何度もこれを唱えてた後ろの席のおっさんには笑いました)

葛藤も執着と同じく、笑えるパターンがあります。

それがこの3つ。

・葛藤が強すぎる
・葛藤の仕方がおかしい(バーミヤンでハムレット)
・外的キャラクターと結びついた葛藤

基本的には、葛藤も執着と同じく常識を超えて強いと笑えます。(そしてちゃんと動きに表れると)

でも、ただ大げさにやればいいってものではない。

葛藤のポイントは、その当人がコントロールできていないところが面白さの秘訣のような気がします。

ボーっとしていて、ぼそぼそしゃべるような役だったとしたら、どんなに葛藤が強くてもあまり大げさにワーキャー動いたりしないですよね多分。

でも、葛藤の度合いがその役のコントロールできるレベルを超えていて、無意識に変なクセが出てしまったりすると観客はやっぱり面白く感じます。

だから動きの大きさが、コメディの面白さとはイコールにはなりません。

葛藤の仕方がおかしいから笑えるというのも、葛藤がコントロールできないくらい大きくて変な葛藤の仕方として表れてくるから笑えるということです。

だからやっぱり前提にコントロールできているかどうかがある。

まとめると

葛藤がその役にコントロールできないくらいのレベル
かつ
その葛藤が動きとして表れる

と人は面白く感じる。

です。

さて、葛藤については理解いただけたと思うので、ここからは外的キャラクター、つまり動きを説明していきます。

外的キャラクター

外的キャラクターとは、動き、話し方、声のトーン、クセなど、感情とは違い、目に見え、耳に聞こえる、役の外的な部分のことです。

コメディと言ったら、特徴的な動きや大げさな演技を思い浮かべると思いますが、それがこれです。

ただし人を笑わせるのには、(繰り返しになりますが)大げさな動きは必ずしも必要はなく、ロートーンでぼそっとしゃべるような役でもはまれば笑いが起きます。

お笑いで言えば、四千頭身の後藤君みたいな感じですね。

エガちゃん(江頭2:50)のように全力で動き回って笑いをとる芸人もいれば、だいぶ古いけどつぶやきシローさんみたいにぼそっとつぶやいてウケをとる芸人もいる。

コメディも同じです。大きい動きは必ずしも必要ありません。

特徴的であればいい。

その特徴的なキャラクターと、前述した執着や葛藤と合わされば、より笑いを起こしやすくなります。

でももし、まだコメディに慣れてないなと思うのなら、大きな動きからやっていくのが良いでしょう。

なぜなら、動きと心のリンクがわかりやすいからです。

たとえば、好きな子に「好きです!!」と伝えるシーンがあるとします。

真面目な顔してセリフを言うだけでは、それはドラマ。

でも、(花束を渡すように)手のひらを上に向けたまま思いっきり相手の方に両手を突き出して、「好きです!!」と言ったらコメディになります。

そんな変な動きで告白する人いないですからね。

ただ、多分それだけじゃ笑えない。

「なんだこいつ」

で終わってしまう。

でもちょっと考えてみてください。

もし道端を歩いていて、本当にその動きで告白してる人見かけたら思わずにやにやしてしまうでしょ?

そして、相手がどう反応するか気になるでしょ?

なのに、舞台上でやってもこれだけじゃ笑いにつながらない。

芝居だと笑えない理由は、役の衝動と特徴的な動きが一致していないからです。

衝動や葛藤があったとしても、それらと身体の動きが結びついていないと演技が浮いてしまいます。

もっとピッタリの動きを探してみましょう。

身体の下から土を掘り返すように両手を持ち上げて「好きです!!」の方が気分が乗るのか。

ものすごく変顔してみたらもっと乗るのか。

「好きです」の言い方を変えてみた方がもっと気持ちが伝わるのか。

とにかく自分の心に問いかけ続けます。

どの動きが気持ちいい?

どの動きだともっと想いが伝えられそう?

それを見つけるために、とにかく大きく演じます。

小さいと、衝動との結びつきが見えにくいです。

感覚としては、なんとしてでも相手からOKをもらいたいから、どんどん動きが大きくなっていってしまう感じ。

毎回、動きながら「好きです!!」とやるたびに、「そんな程度で振り向いてもらえるか?」と自問しましょう。

「もっと大きく!もっと特徴的にやれば振り向いてくれるかもしれない!!」

最終的に出来上がった動きが、現実世界じゃありえないようなものになるかもしれません。

でも、あなたの執着と衝動が本物で、作り上げた動きがその想いを邪魔することなく放出させてくれるものであればきっと笑いが起きます。

「え!そこまでやる!?(そんなことする?)」って。

だから、執着と葛藤はあなた自身が本当に感じるまで作りこまないとダメ。

そうしないと、気持ちを伝えるための動きが見つかりません。

動きだけが大きくなりすぎて浮きます。

大きい動きと強い執着のリンクができるようになったら、今度は役に合わせた動きに執着や葛藤を混ぜていきましょう。

つまり、必ずしも大きい動きでなくてもその役なりの動きが出てくればOK。

もじもじしながら「好きです・・・」でも、しっかり葛藤が見えれば爆笑をさらいます。

(その役にとって)最大限の伝え方であればOK。

大きくやるより、自分の目的が叶えられる(と役が感じる)ベストな動きがあるはずです。

まとめ

ついコメディは頭で計算してしまいがちです。

ここをこうした方がもっとウケるんじゃないか。

声を高くしてみた方がもっとおもしろいんじゃないか。

でも、これで上手くいくことは「マジで」ほとんどありません。

観客はその姑息なやり方にすぐに気がつきます。

特徴的な動きを役に与えるのは、あくまで、その役の目的を達成しやすくするためです。

ぼそぼそしゃべるキャラクターだったら、告白のときもぼそぼそがベースです。

このキャラクターに、大きな動きをムリヤリ当てはめたらキャラクターが崩壊するだけ。(意外とピッタリ合う大きな動きもあるかもしれませんが)

想いを伝えたい。でも振られるのは怖い。という葛藤に苦しみながら、役のキャラクターなりの動きが合わさって面白さが生まれます。

そしてその根幹には、役者自身が本当に執着心や葛藤を感じていることが大事。

ここがウソだと、身体の動きと心の動きがリンクできず違和感が残ります。

だから動きは練習で作っても固定はしません。

「そんな動き方をすることもあるかもな~、でも本番では全く違う動き方するかも」くらいに軽く考えましょう。

動きという演出に縛られたら、役者の心も動かなくなるからです。

この記事をまとめると、

自分ではコントロールできないレベルの執着や葛藤が、特徴的な動きとして表れたらコメディになる

です。

そのためにはちゃんと執着と葛藤を感じられるリアリティが大切。

だからコメディはまずドラマから作るんだよ。

という話でした。

さて、この記事ではドラマからコメディを作るとは言いましたが、どうすればリアリティを持たせられるかについては詳しく触れませんでした。

普通のドラマ芝居でもリアリティを持たせるのは、やっぱりそこそこ難しいです。

リアルな演技力を身につける練習方法を3つ、こちらの記事で紹介しています。

ご興味あればご覧ください。

また、台本をもらってから本番までの役作り全体の流れについてはこちらの記事をご覧ください。

僕自身が本当にやっている方法です。

かなりストイックだと思います(笑)

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