一役一冊。役者ならノート一冊は使いきれ!

一役一冊。役者ならノート一冊は使いきれ!

この記事は、

・俳優がノートに書く?え?何を書くの?

・俳優って台本覚えればいいんじゃないの?

・台本にメモしたりするのは見たことあるけど・・・

こんな想いをお持ちの方に向けて書いていきます。

この記事を読むとこんなことがわかります。

・ノート2つの使い分け
 稽古ノート
 役作りノート

・役作りノートに書く具体的内容

どうも俳優をやっていますヒロユキです。

僕は今年で俳優歴13年目になります。事務所に所属していないこともあり大きい作品には出ていませんが、それでもTVドラマ、映画、舞台、ラジオドラマ(製作、脚本、主演)など色々な媒体に出演してきました。

また、この13年間「演技とは」ということを考え続けてきました。その間にスタニスラフスキーシステム、リーストラスバーグメソッド、マイケルチェーホフテクニークなど様々な海外の演技論も学び身体に落としてきました。

この記事では、一つの役を作るのにノート一冊使いきるくらい、ノートに書きまくれ!というテーマで話していきます。

しかし、俳優がノートを使うと言っても、「え?何を書くの?」とイメージできない人も多いかもしれません。

・「台本を読み込めばいいんじゃないの?」

・「大切なところは台本に書き込めばいいんじゃないの?」

いえいえ、それじゃ全然足りません。

少なくともノート一冊は使いきります。

なぜなら、書くことは役を深めるのにとても重要。

というか、

書かずにどうやって役作るんだ

って思ってしまいます。

毎日、どこに行くにもペンと小型ノート(人によってはA3ノート)をセットで持ち歩きます。

思いついたことをすぐメモするためです。

最近は、アイディアをまとめるだけだったらスマホのメモ帳も使いますが、それとは別にノートを用意してあります。

そして役をもらってから本番までの期間で大体B6のノート一冊は最後のページまで書ききります。

さて、それでは一体何を書くのか?

今日はそんな話をしていきます。

ノート2つの使い分け

何をノートに書くべきか。

結論から言うと、ノートには何を書いてもいいです。

「は?」ってなりますけど、もう本当になんでもOK。

歩きながら思いついたアイディアでも、役の状況でも、役の過去に起きたこと、自分の過去で役作りに使えそうなこと・・・・・・なんでも。

とは言っても、これだけで「じゃあ、僕もノート使おう!」とはならないと思うので、この記事では絞っていきましょう。

まず、ノートを2つ用意します。

  • 一つは、演技の稽古をしていて何を感じたかを記載するノート。
  • もう一つは役作りのためのノート。

それぞれ説明していきます。

稽古ノート

まずは稽古の内容を記した稽古ノートです。

書く内容は、この3つ。

・何の練習をしたか
・どんな動きをしたか
・どうなったか

この中で大事なのは、下の二つです。

「どんな動きをしたら、(感情や感覚は)どうなったのか」

あなたがとった行動によって、あなたはどう感じたのかをメモしていきます。

つまり、再現性を高めるためのメモです。

例えば、

「8月4日 架空対象行動の稽古をした。」(架空対象行動についてはこちらの記事で)

という一文。

これだけだと、後々見返しても「へ~~」で終わってしまいます。

ノートの効果としては弱いです。

なので、その時の自分の感情をからめて詳しく書いていきます。

8月4日 「架空」
箸をいつもより遠めの場所で握ったら動きに違和感がなくなった。
これからは遠めの位置で持ち方工夫してみる。

8月5日 「リラクゼーション」
初めてから20分くらい何も変化がなく、今日はダメだなと諦めたら、急に激しい感情の波がきて号泣して立てなくなった。諦めるのが大事なのかも。

このように、

日付、練習名、具体的に何をしたらどうなったのか、気づいたこと

これらを記載していきます。

僕は、あまり書いたメモを読み返しません。(書くだけで満足しちゃって・・・)

でも、書いてから数か月後、ふと読み返してみると

「なんだ。この時正解に近づいてたんじゃん!!」

って気づくことがあります。

このノートは、演技の練習内容限定の日記帳みたいな感じです。

稽古中にちょくちょくメモを取るというよりは、練習と練習の間の休憩のタイミングでまとめて書くのが良いです。

稽古中は稽古に集中しないともったいないです。

役作りノートに書く具体的内容

そしてもう一つが役作りノート。

この記事のメインの話になります。

これから、僕のブログで「ノートに」と言ったら基本的にこちらを指します。

一つの役で一冊ノートを使うのは、こちらの役作りノートの方です。

ちなみに、僕は面倒くさかったので一つのノートに役作りの内容と稽古の内容の両方を書いていました。

多少読みにくかったですが、慣れますw

ただ、やっぱり二冊あった方が良いとは思います。

さて、それではこの役作りノートには何を書いていくかというと、主に以下の4つです。

最初に話した通り、基本的には自由なので思いついたアイディアのメモなどにも使って構いません。

役作りノートの内容4つ

・脚本に載っていない役の過去
・自分の過去
・役の現在の感情
・共感できるところ、できないところ

役作りノートを書くポイントは、

細かいことは無視してOK!とにかく書く!筆を止めない。

です。

他の演技の練習もそうですが、ノートの取り方も細かいことは気にしません。

とにかく書く。書いて書いて書きまくる。

書いてるうちに筆がのってきて途中からスラスラ書けるようになります。

もし、前に書いたことを修正したくなったら、「修正はせずに」次のページに違うことを書いてください。

最初のページと、最後のページで役の解釈が全く変わってくることが普通です。

全然それでOK。

とにかく、量を書いていきます。

あと、役のことを書くのは、3人称視点でもいいですし、1人称で書いても構いません。

例えば、

「僕(役者本人)は〇〇だと思うけど、(役のキャラクター名)はこう考えてるよなー」(3人称視点)

「俺(役のキャラクター)はこう考えてるんだー!」(1人称視点)

下の例のように、役になったつもりで書いていって構いません。

僕の場合は、台本もらった当初は自分と役があまり近づいていないので、3人称視点で書き始めます。

だんだん筆がのってきたら、1人称視点に変わっていきます。

「よし!そろそろ1人称視点で!」

と言った感じではなく、書きやすいように書いてたらいつのまにか1人称視点になっている感じです。

本番近くなると、全部1人称視点ですね。

脚本に載っていない役の過去

役の過去を、自分で想像して創造します。

役を理解するために、そしてその役の気持ちに共感するためにやります。

例えば、「この役はすごく性格がねじ曲がってるけど、ほんとうはさみしがり屋だよな」と脚本を読んで役を解釈したとします。

なぜそうなったのか、脚本に書いていることはなかなかありません。

こういったときに、役の設定を捻じ曲げない程度に自分で過去を創造します。

たとえば、

もしかすると中学校の時いじめにあって、その時仲良かった友達も誰も助けてくれなかったのかも。

家に帰っても親にも相談できないし、むしろ親は勉強しろとしか言わず、誰にも見向きされなかった。

青春の始まりをそんな感じで送ったんじゃないかな。

という風に自分で作って構いません。

そして、のちのち役作りを進めていく上でつじつまが合わなかったり、「どう考えても、いじめられてはいないわ」と気づいたら、あっけらかんと過去に書いたその部分は無視しましょう。

ちなみに、今はさらっと書きましたけど、実際は過去をものすごく具体的に作ります。

いじめられたとしたならば、その時の状況・理由・どんな目に遭ったか、友達に助けを求めた時なんといって突き放されたか。

細かく書けば書くほど、その過去を信じやすくなります。

そして、過去を信じることができると、役としてその場所にいやすくなります。

役の背負っているものを作れているからです。

また、役の過去をしっかり作れていると、役の雰囲気がでます。

「なにかわからないけど、こいつなにかあるな」

というやつです。

仮にセリフがなかったとしても、雰囲気だけで魅せれます。

自分の過去

自分の過去を使うのは、メソッド演技やイヴァナ・チャバックの演技術で用いられます。(ウタ・ハーゲンも?)

その他の演技術では、自分の過去は用いず、想像によって役を作っていきます。

自分の過去を使うことは感情を大きく出せて強力ですが、その反面、役者の精神にダメージを与えます。

詳しく知りたい方は、こちらのメソッド演技の危険性についての記事をご覧ください。

さて、自分の過去を書くことはなぜ必要なのでしょうか。

それは、自分が過去に体験した出来事から、そのときに沸き起こった感情を思い出して、役の感情に共感することができるからです。

例えば、あなたの役が失恋している役だったとします。

その場合、基本的には自分の失恋した過去を引っ張り出してきて、役の感情に共感していきます。

ただたまに、同じ失恋でも上手くリンクしないことがあります。

そういうときは、同性の友達と喧嘩したときや、欲しいおもちゃを買ってもらえなかったときなど違った場面からも探していきます。

このときに、役の過去(+役の現在の気持ち)と自分の過去の出来事をノートに行ったり来たりしながら書いていきます。

正直言って、この役の感情に共感するために自分の過去とすり合わせていくのが、役づくり全体で一番時間がかかります。

役作り全体の7割くらいが、ここなんじゃないかな。

実際に自分が体験した過去と言えど、正直普段は思い出すこともあまりないと思います。

なので、思い出せるところから書きまくって、書いていくうちに少しずつ深く思い出していきます。

失恋など、つらいことを思い出し、その時の気持ちを掘り返すのは非常に大変です。

きついです。

頭おかしくなります。

「役者ってなんて因果な商売なんだ、ドMじゃなきゃやってられない」

と毎回思います。

自分が傷つきながらも、ノートに書き続ける理由は一つです。

共感

全ては、役の気持ちに共感するためにやっています。

ちなみに演技コーチ、ステラアドラーは、このやり方は心身ともに危険なのでやらないようにと言っています。

マイケルチェーホフの著書「演技者へ」でも、精神的に良くないと書かれています。

主にこういう役作りをするのはリーストラスバーグのメソッド演技ですね。

役の現在の感情

当然書いていくのは、過去のことだけではありません。

作品の中での役の気持ちも書いていきます。

あなたが演じるシーンで役は何を感じているのか、何を言おうとしているのか、役の目的を考えていきます。

最初は、台本を繰り返し読み「彼の目的は〇〇で、ここでは、〇〇なことを言いたいからこういうセリフを言っている」

と分析するかたちで書いてしまってOKです。

さきほども言ったように、分析が間違ってたとしても気にしません。

あとから「あー違うな」と気づいたら、別の解釈を書いていくだけです。

ノートのページはいっぱいあるんですから。

そして、役作りが進んできたら、もっと自分(俳優自身)の情緒に訴える書き方がいいです。

分析するだけでは、役に近づけません。

感情が近づかないと、演技には活かされません。

たとえば、

「あの子のことが好きだ。だってあの子のことを思うと・・・」

と書いたとします。

これで心に来るのならいいんですけど、もっと「ノル」他の言い方があるかもしれません。

好きだ!!!好きなんだよ!!どうしようもなくね?頭から離れねえんだもん!24時間考えてるよ。まじで。夢の中にだって出てくるしさ!!!!どうしろっつーんだよ!!!!

みたいにビックリマーク多めで書いていきます。

別にビックリマーク(エクスクラメーションマーク)多めでなくてもいいんですけど、あなたのテンションがあがる書き方にしていきます。

こうすると書いてるときものるし、読み返した時も気分が上がってきます。

実際、本番前に読み返して上がる文があると、便利です。

共感できるところとできないところ

「(役の気持ちに)共感しよう共感しよう!」と思い焦がれても、出来ないときは出来ません。

人殺しの役ですら、自分の過去に持っていた殺意とかをベースに作っていきますが、いくら考えても役の想いが見つからないときもあります。

「なんでそんな気持ち(考え)になるのか全然わからん」


こういうこともノートに書いて一つずつ探していきます。

1.「役は○○だと考えている。僕だったら××だと考えるなぁ」

2.「いや、○○の部分はどうしても共感できないし、理解できない」

3.「・・・でももし、僕は過去▲▲という選択をしたけど、■■の方を選んだら役と同じような考えを持ったかも」

という風ににじりにじりと近寄っていきます。

4.「僕がもし■■を選んだとしたら、きっとこうなって…こうなって…(自分の過去の違う選択を想像している)」

5.「あ!たしかに■■を選んだら、この役の行動もわからなくはない!!というか、そりゃそうなるよ!!」

このように、自分の過去を「もしそうじゃなかったら?」と問いかけて、別の過去の出来事を想像していきます。

そして、役の気持ちが理解できるまで、あなた自身の過去の出来事をコロコロ変えていきます。

これを役作りの度に繰り返すことによって、

自分の本当の過去がどれだったかわからなくなります。

僕はそれが楽しいですがw

ただ、本当に疲弊します。

役の過去と、現在の気持ちと、自分の過去と、自分の本来体験していない想像の過去をグルグルグルグル、ノートに書き続けます。

これをずっと繰り返していると、次第に自分と役の過去が混ざってきます。

一瞬、「どっちが自分の過去だっけ?」と記憶の混濁が起きます。

精神的に良くないのは明白ですが、ここまでくると、あなたが役を演じるというよりも、あなたと役は分かちがたい存在になってきます。

どっちも自分みたいな。

ここに至るまで非常に疲れます。

でも、「どっちも自分だ」って気づいたときは、苦労が実を結んだ気がしてちょっぴり嬉しいです。

ここまでノートに色々書いてきたのは、すべて役の気持ちに共感するためなんですから。

まとめ

この記事では、ノートを2つ用意することをオススメしました。

一つは、稽古ノート。

もう一つは、役作りノートです。

稽古ノートは、

日付、練習内容、どう動いたらどうなったのか

を書いていきます。

後から見返したときに使えるようにです。

役作りのためのノートには、

・役の過去

・自分の過去

・役の現在の感情

・共感できるところとできないところ(そしてどうしたら共感できるか)

といったことを中心に、ありとあらゆることを書いていきます。

書くことは本当になんでもよくて、ノート1ページ丸々

好きだ好きだ好きだ好きだ好きだ好きだ好きだ好きだ好きだ好きだ

で埋めたこともありました。呪いか。

こちらの記事で解説した独り言の練習に比べると、どうしても書く方がスピードは遅くなります。

遅くなるからこそ、さらっと流されず、あなた自身の感情に響きながら書いていくことができます。

ただ、アイディアの数は口に出した方が圧倒的に多くなります。

だから、二つを併用してやるのもいいかもしれません。

独り言でブレインストーミングして、良いアイディアはメモをとる。みたいな。

最後に

最後に、ここまで読んでいただいてお分かりだとは思いますが、ノートに書くのは、役の内面を作るための作業です。

ノートに書いて気持ちを高めていくのは、とても重要ではありますが、その反面「頭でっかち」になってしまうというデメリットもあります。

僕は、役作りの過程で頭でっかちになってしまうのは、通るべき道筋だと考えています。

一旦頭でっかちになるくらい考えまくって、そのあとに感情と行動が連携すればいいからです。

「なんとなく感情作りました」

「なんとなく演じられるようになりました」

よりも、

「頭を限界まで使い切る」

「それを全て行動に落とす」

の方が、演技の質もパワーも大きくなります。

ノートを使って頭でっかちになってしまった状態は、役作りの過程で、何回かにわけて行動に変換していくことが大切です。

そのためにオススメするのは、「エチュード」。

ノートに書いて感情を高め、それを実際の演技として表現するエチュードの相性は抜群です。

ご興味ある方は、下の記事をご覧ください。

また、ノートを使わずに(またはノートと併用して)感情の強さを高める、いわゆる「感情解放」の方法はこちらの記事をご覧ください。

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