この記事は、
・リアルな演技がしたい
・演技力ってどうすれば身につけられるの?
とお考えの方に向けて書いていきます。
この記事を読むとこんなことがわかります。
①演技力を身につけるには、俳優の7つの要素を全体的に底上げする必要がある
②リアルな演技をするには「意識の方向」を整えるだけで十分な理由
→感情もキャラクターもいりません
③意識の方向を良くする具体的な練習方法
どうも俳優をやっているヒロユキと言います。
僕は今年で俳優歴13年目になります。事務所に所属していないこともあり大きい作品には出ていませんが、それでもTVドラマ、映画、舞台、ラジオドラマ(製作、脚本、主演)など色々な媒体に出演してきました。
また、この13年間「演技とは」ということを考え続けてきました。その間にスタニスラフスキーシステム、リーストラスバーグメソッド、マイケルチェーホフテクニークなど様々な海外の演技論も学び身体に落としてきました。
この記事は、リアルな演技をしたいあなたに向けて書いていきます。
一般的には、めちゃくちゃ誤解されてそうですが、リアルな演技には感情もキャラクターもいりません。
だから役作りで、役の内面を深堀りしていく必要は実はないのです。
必要なのは「意識の方向を完璧にする」ことだけ。
これだけで、観客も監督もそして自分自身もリアルだったなと感じることができます。
さらにすごいことに、意識の方向が良くなると自然と感情が沸いて出てきます。
もちろん、役の深い感情にタッチするには別の練習が必要です。
辛く険しい練習です。
ただ一つ言い切れるのは、小さい舞台とか小規模な自主製作映画くらいであれば、
この意識の方向を完璧にするだけで無双できます。ホントです。
演技力の身につけ方、そしてリアルな演技をするための意識の方向、解説していきますね。
それでは、スタート!
演技力を身につけるには、7つの要素を全体的に底上げする必要がある
一言で演技力と言っても、一体なにを指しているのかいまいちわかりません。
僕のブログでは、理解しやすいように目に見える要素4つと、目に見えない要素3つの合計7個に分類しました。
それがこちらです。
目に見える要素
①感情
②キャラクター
③意識の方向
④ノリ
目に見えない要素
①想像力
②本番力
③読解力
それぞれのの要素の詳しい解説はこちらの記事をご覧ください。
さて、上にあげた要素全てが、俳優にとってとても大切です。
・感情が強いと視聴者の心が動きます。
・キャラクターが大きいと役の存在感がでます。
・役に乗っていると、役が活き活きしてきます。
・想像力があるからこそ役作りができるし、カメラ前や舞台上でも作品の設定を信じられます。
・本番力によって緊張せず練習で培った演技ができます。
・読解力によって役の本当の気持ちを読み解けます。
・そして日常と同じように、人や物に意識を向けることによって、芝居中でも普段と変わらないリアルな感覚を持ち込むことが出来ます。
これら全ての要素を底上げすることで、全体的に演技力をあげることができます。
ですからあなたが、
「演技力を身につけるにはどうすればいいんだろう」
と考えた時は、
「この7つの要素のどこが足りないのか」または「どの要素が今一番得意で、さらにその要素を伸ばすべきなのか」と考えていくと良いです。
感情とキャラクターに関しては、具体的に演技力をあげる練習方法を記事にしました。
良ければご覧ください。
リアルな演技をするには「意識の方向」を整えるだけで十分な理由
さて、それではこの記事の本題に入っていきます。
まず、「意識の方向が大切」と言われてもいまいちピンとこないと思います。
結局意識の方向ってなんなの?ってなりますよね。
意識の方向の定義はこれです。
日常生活であなたが感じているのと同様に、同じ対象物に同じ割合で意識を向けること
具体例を出します。
あなたは昼ご飯を食べに、あるラーメン屋に初めて入りました。
このラーメン屋のシステムやオススメラーメンがなにかは全くわかりません。
看板の文字と、なんとなくの雰囲気で入りました。
さて、入り口のドアを閉めたあと、あなたは一体どこに意識を向けますか?
もし僕がこの状況だったらどうするかとして解説していきますね。
人によって意識するポイントは違うので、一つの例として考えて下さい。
僕なら、まず最初に席の空き状況を確認します。
お腹がとても空いているのであれば、一席でも空いていたらOK。
「ちょっとゆっくりしたいな」と思って店に入ったのであれば、一席以外全て埋まっているのなら、もっとゆっくりできそうなお店を探します。
さて次です。
このラーメン屋は券売機でチケットを買うシステムなのか、いきなり席に座るシステムなのか疑問に思います。
ですから、周りを見渡して券売機があるかどうか調べます。
店内を見回してみると券売機がありました。どうやらチケット制のようです。
さて次、どのラーメンを食べようか考えます。気になる点は値段とこの店のオススメラーメン。
本当のことを言えば、ラーメン屋に入る前に食べログとかで調べますが、今回はふらりと入ってしまったバージョンで考えていきます。
ざっとそれぞれのラーメンの値段を見ます。
「なるほど、ランチセットだとプラス100円でご飯と味玉がついてくるのか。ただ、800円近くいってしまうな」など。
他の選択肢がないか、もう一度店内(壁中心に)を見まわして、オススメラーメンのポスターが貼ってないか探します。
あ、煮干しラーメンがこのお店のオススメだそうです。
値段は880円。
ランチセットより高い。
ちょっと悩んだ末、800円で収まるランチセットにすることにしました。
次は支払いです。
このお店は、SUICAが使えるのかな?それとも現金のみ?
あ~どうやら現金のみらしい。まあチェーン店じゃないしな。
カバンから財布を探します。あれ?見つからない。あ、本の裏に隠れてました。
持ってくるの忘れたかと思った。焦った。
さて、財布を空けます。1000円札で払ってもいいけど、出来れば小銭全部使いたい。
小銭入れを確認します。
う~ん。小銭だけで800円分は用意できそうもない。
1000円札と300円で500円のお釣りをもらおう・・・・・・。
いかがでしたでしょうか。
ラーメン屋に入ってからチケットを購入するまでの1分ほどの時間だけでも、こんなにもあなたの意識は縦横無尽に行き交っています。
複雑な意識の方向とその割合を、日常生活では完璧に操っているわけです。
さてそれでは、これが舞台上やカメラの前でも同じようにできるでしょうか?
なかなか難しいと思います。
演じる時は、セリフもあるし、これから何が起きるかわかっています。
日常生活とはだいぶ違っているので、つい物語を進めることを先行してしまう。
まさにここです。
これが演技からリアリティを奪っている原因です。
日常生活だったら当然意識を向けるところに意識を向けていない。
日常生活だったら気にもしないセリフだったり演出に意識が向いている。
これがリアリティを奪っています。
もしあなたが、芝居本番でも日常生活と同じように意識を向けることが出来たらどうでしょう。
観客も監督もあなた自身も、あなたが本当にラーメン屋に来ているように感じるはずです。
意識と行動がラーメン屋に行った時と全く同じなので、脳が錯覚するのです。
ここまで見てきた通り、この意識の方向には感情もキャラクターもいりません。
読解力も想像力もいりません。
ただ日常と同じ対象物に同じ割合で意識を持って行くだけです。
これだけでリアリティが生まれます。
そしてここで生まれたリアリティは、あなたの感情にも作用します。
感情をムリヤリ出そうとしなくても、脳が勝手に錯覚して素直に感情が動き出します。
さっきの例の続きで考えてみましょう。
券売機で買ったチケットを持って席に着いたとき、すぐに「ランチセットください」と言うでしょうか。
もしかすると、店員さんが忙しそうに動いているのを見て、
①「店員さんが近づいてきてから声をかけよう」
②「今大声で呼び止めるのは失礼かも」
③「大声出すのは恥ずかしい」
と感じるかもしれません。
この恥ずかしいという感情は、意識の方向を無視していたら浮かび上がってきません。
だって台本には「ランチセットください」ってセリフが書いてあるんですもん。
店員がどこにいるかなんて考えずに言ってしまいます。
このように意識の方向を全く無視していると、日常生活なら当たり前にある思考や感情も全て無視されます。
パッとチケットを買って、「すいません!ランチセットください!」だけになってしまいます。
演技の質に雲泥の差が生まれます。
意識の方向を整えることはリアルな演技をする上で欠かせません。
そして、意識の方向のレベルが低い俳優は非常に多いので、この部分をマスターすれば大体の芝居では無双できます。
一人だけ異質のリアリティを持っている状態です。
意識の方向を良くする具体的な練習方法
さて、それではどうすれば意識の方向を良くすることができるのでしょうか。
実はとても効果的な練習方法があります。
その名は、
架空対象行動
具体的な練習方法は、下の記事をご覧ください。
動画付きで説明しています。
上の記事内でも説明していますが、まずは目の前の小さな対象物一つに絞って意識の向ける箇所と割合を丁寧にやっていくことが大切です。
そして意識しないでもできるようになってきたら、だんだん対象物の数を増やし、対象の広さを広くしていきます。
最終的には、例であげた初めてのラーメン屋もやってみましょう。
この架空対象行動(上の例のラーメン屋の練習は身体的行動と言います)が苦もなくできるようになると、あなたの意識の方向レベルは格段に向上しています。
この練習の大きなメリットは二つ。
①リアリティが桁違いになるので、大体の芝居において無双できます。
②他の俳優(映画やドラマの中の人)を見て、上手い下手がすぐにわかるようになります。
テレビや映画に出演している俳優も、必ずしも演技が上手いわけではありません。
意識の方向の練習を繰り返していると、他の俳優の演技を見て、
「意識を向けるべきところに向けてない」
「意識の向きと行動が一致してない」
というのがすぐにわかります。
つまり演技を見る目が養われます。
「こういうことを言うと、意識なんて人それぞれだからわからないじゃん」
と言われることもありますが、架空対象行動をやっていると明らかにそうは動かないというのがわかってきます。
パンにジャムを塗ってるときに、急に走り出したらおかしいですよね。
それくらいの違和感を感じられるようになります。
さっきのラーメン屋で言えば、初めて入った店なのに、当たり前のように券売機の前に立つとかです。
「あれ?初めて来た店なんじゃないの?なんで券売機の場所知ってるの?」
という違和感。
こういうのを、作品を見るたびに感じられます。(=下手な演技見ると軽くイライラするようになりますw)
架空対象行動はすぐに身につくものではないですが、必ず演技力の底上げに役立ちます。
コツコツ頑張っていってください。
まとめ
リアルな演技に必要なのは正しい意識の方向だけです。
感情やキャラクターは、全体的な演技力向上には当然必要ですが、リアルな演技にはなくても構いません。
演技力を構成する要素は7つあります。
詳しくはこちらの記事をご覧ください。
演技要素のうち、感情とキャラクターの要素を成長させる練習方法は、独立した記事を書いてまとめてあります。
ご興味ありましたら、ご覧ください。
この記事ではラーメン屋の例を使い、舞台の上やカメラの前では、ほとんどの俳優が意識の使い方が雑になってしまうことを説明しました。
意識の使い方が雑になってしまうと、演じてる俳優本人がリアルな感覚を感じません。視聴者も当然違和感を抱きます。
だからこそ、あなたが意識の方向をマスターできたら無双できるわけです。
そんな意識の方向をマスターするための練習方法が、架空対象行動です。
やり方はこちらの記事をご覧ください。
架空をやることで、こんなメリットがあります。
①リアリティが桁違いになるので、大体の芝居において無双できます。
②他の俳優(映画やドラマの中の人)を見て、上手い下手がすぐにわかるようになります。
頑張っていきましょう。
ヒロユキの演技ワークショップはこちらから。